虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その21

連続更新です(03/06)
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 決勝戦、そして三位決定戦は翌日になるということで……再び休憩に入る。
 基礎縛り部門なので、特別装備の手入れをする必要なども無い。

 また、差を付け過ぎないようにバフなども試合前に解除される……要するに、しておかないといけないことがほとんどなかった。

「まあ、それなら[称号]も外しておかないといけないけどな……まあそれだと、犯罪者とかが思いっきり暴れそうだしな」

 彼らはマイナスの[称号]を得てもなお、そのスタイルを貫く豪の者。
 擬似的にでもそれらの枷が失われると、善良な者たちが圧倒的に不利になる。

 また、[称号]を前提としたスタイルを確立させている者も戦えなくなってしまう。
 そういった理由もあって、俺は『生者』の権能チートができているわけだ。

「……次で全部を開示できればよかったが、俺にはまだ参加する部門があるからな。向こうでしか開示できないものはそのままに、どれだけこっちで手札を隠せるかだ」

《決勝戦の出場者ということで、多くの者が旦那様の能力を考察しております。すでに、かなり的を得た情報も……》

「どこまで正解なんだ?」

《『生者』による複数の[称号]枠生成は知られていないため、どれもスキルでの考察でした。しかし、その効果そのものに関してはほぼ正解でした》

 つまり、死んでも延命、攻撃貫通などはバレているわけだな。
 どうせ『バトルラーニング』は最適な動きということで、もっとバレているはず。

 だが、こちらの場合は分かっていても対応できないので問題ない。
 仮に最適な動きに合わせた対処をしても、それなら俺が手動エラーを混ぜればいいしな。

「そうだ、決勝の相手なら情報も分かっているだろう?」

《はい。名はジーヂー、当大会においていっさいの武技を使用していない武人です》

「……どういうことだ?」

《正確には、システムに頼った武技を用いておりません。武術の場合、縛りで封じられているのは基礎以外の武技を発動する際の補正です。それそのものの発動は、決して不可能ではございません》

 これまで誰もやっていなかった、武技をそもそもの身力の運用から行う完全手動制。
 使うまでの難度が非常に高い代わりに、発動後の挙動は使用者の思うがまま。

 まあ、このEHOがスタートしてからそれなりに時間も経っている。
 こちらでそれなりの時間を費やせば、決して不可能では無いな。

「となると、『バトルラーニング』がどこまでそれに対応できるかだな……今までの相手が搦手をやっていないわけないし、それ対策もちゃんとしたうえで勝ってきたはず」

《──情報はすでに。旦那様、いかがなされますか?》

「カッコ悪い姿を見せるわけにはいかないからな。相手には悪いが、こちらもそう見えないぐらいには力を出させてもらうぞ」

 子供たちの、妻の期待に応えたいのだ。
 ズルと言われない範疇で、いろいろとやらせてもらおうじゃないか。


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