虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その20

連続更新です(02/06)
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 それからの俺は死にまくった。
 だがその死因は『死を愛す者』によって記載され、考察材料が増えていく。

 魔法自体は、どれも初歩中の初歩。
 低性能でありながら、なぜかそれが体内で発生するため抗うことなく死んでしまう。

 本来、それは非常に高度なことだ。
 なぜなら人は、無意識的に体内へ干渉する魔法を拒絶しているから。

 隠しステータスである『MIN』、魔力防御と呼ばれる数値がそれを高めている。
 それだけでなく、魔力が多い者は身体強化と同じ要領で保護膜を張っているらしい。

 そんなこんなで、内部から魔法などで相手に攻撃するのは非常に難しいのだ。
 それを可能とするのは、圧倒的な差……もしくは特殊な能力だろう。

「……抵抗を無効化、もしくは何らかの形で通すことができる能力でしょうか」

「仕掛けを言うわけないじゃない」

「ええ、構いませんよ。それに、そろそろ始める予定でした──“神持祈祷:サウザンドエッジ”」

「なっ……!?」

 祈りを天に、神に捧げると、いつにもなく光が差し込むという演出が発生する。
 まあ、いいかと思いながら求めた能力を起動──大量の剣が地面から生えた。

 突然の変化に驚く対戦相手、だが俺は冷静に『バトルラーニング』に身を委ねる。
 大量の刃を認識すると、体は近くのそれを拾い上げて投擲を開始。

 とっさに魔法で防御を始めるが……この舞台に生えたのは千本の刃。
 投擲の動きも完璧なので、曲射で防壁を越えて攻撃している。

 そうなると、自分を包む殻のように防御するしかなくなるが……そうなれば、脱出することは不可能。

「終わりです──“神持祈祷:マジカルロジカル”」

「なん、で──」

「なるほど、魔力に関する事象の判定を弄れる能力ですか。では、武器に魔力を流し込んでおけば使えますね……ダメージ判定は魔力にしました。どうぞ、耐えてくださいね」

 俺の体を破壊しながら、連続剣戟で一気に彼女の魔力を削っていく。
 これは彼女の『プログレス』、ダメージ計算などを改竄できる能力だ。

 今までの殺し方は簡単、魔法のダメージ判定を運の数値による減衰で通す。
 他の人でも大して上げていない数値で魔力抵抗を計算され、あっさりと通ったわけだ。

 厄介なのはこの際、無意識の魔力抵抗の方もいっしょに計算に入ってしまう点。
 なので数値で負けてしまうと、完全に魔法が通り──ああなっていたわけだ。

 俺が使う場合、初期化された状態なので大した改竄はできない。
 せいぜい減らす数値を、生命力ではなく魔力にしただけだ。

 だが、『貧弱な武力』と『闘匠』を発動して、確実にダメージを与えれるようにした。
 どんどん攻撃すれば、その分だけ彼女も魔力を減らすことになる。

 抵抗しようにも、その魔力すら今は使えなくなる……やがて魔力が枯渇し、気絶した彼女から俺は勝利を得るのだった。


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