虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その14



 今日はこれで終了だ。
 明日になれば、残りの試合を一気にやって次の部門が始まる。

「『SEBAS』、報告を頼む」

《畏まりました──旦那様はヒールロール、トリックスターなどの評価がされているようです。あくまでも演技であること、ドSではないと……こちらはタクマ様の根回しが入っているようです》

「……ったく、お節介なヤツだな」

 情報屋であるアイツが介入すれば、まあ悪い評価ばかりにはならないだろう。
 ルリもこういうところは不干渉だし、そもそもこんなことでは頼りたくないし。

「それで、戦略に関する情報はどうだ?」

《『人間爆弾』、そして『死兵』の情報が出ております。[称号]の複数セットそのものは、条件を満たした者であれば可能ですので問題ございません》

「あー、なんだっけ? そういうスキルとか職業があるんだよな」

《【収集家】系の職業です。アイテム管理に補正が入るだけでなく、[称号]のセット可能性が職業の位階に応じて増えます》

 これまでの原人からすると、自分で書き換えができない[称号]なので、当たりはずれの激しい職業という認識だった。

 しかし、自由にセットできた休人、そして今では『プログレス』による変更を原人でも可能になったため、複数の[称号]効果の恩恵はそれなりに気にされているらしい。

「俺はでも、ダメなんだよな?」

《旦那様は『生者』に[称号]の枠をすべて圧迫されておりますので、どれだけ枠が拡張されようと追加はできません》

「その分、生死の[称号]は無制限に。そうじゃない[称号]も現状で五つまでセット可能だし、それは高望みってものだな……さてさて、そろそろ話を戻すか」

 それから俺は、『SEBAS』と三回戦での振る舞いについて考え合う。
 難しい問題だったが……やはり、困ったときは『SEBAS』に相談だな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

≪赤コーナー、冒険世界より参戦。何度見ても飽きない戦いっぷり。それはまさにこの大会のトリックスター。今度はいったいどんな演目を魅せるのか──アンノウン!≫

 ブーイングはまだあるが、前回に比べて数が……増えているな。
 まあ、男は男でも今度は少年、さすがにやり過ぎという考えがあっても仕方がない。

 舞台に自力で挙がっている辺りにも、からかうような声が聞こえてくる。
 だが、そんな野次を言った者たちは、運悪く不幸な目に遭っていた。

 ──不思議なこともあるもんだな。

≪青コーナー、冒険世界より参戦。その姿は始まりと終わりにのみ現れる。捉えられる者なら捉えてみろ、二度目は死と共に──ノーネーム!≫

 それが休人としての名前なのか、それとも大会用の偽名なのか。
 いずれにせよ、暗殺者系の戦闘スタイルなのはよく分かった。

「よろしくお願いします」

「…………」

 会話は無理そうだ。
 しかし、なんだか知っている気配を感じ取れる……まさか、な。

≪それでは、三回戦──開始!≫

 いずれにせよ、勝たなければならない。
 致命的なことにならないためにも、安全策は用意しておかないと。


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