虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その08



≪定刻となりました──転送を行います≫

 時間となり、俺の体はコロシアムの舞台上に転移……されなかった。
 体が負荷に耐え切れず、死んでしまう……まあこうなることは分かっていたこと。

 自分の足で舞台まで向かい、どこかで見ている主催者へ自分が参加者なことと、ある事情で転移が使えないことを説明する。

 すぐに確認を取ってくれたため、どうにか入場を許可された。
 ……しかしまあ、代わりにどういうことだと鋭い視線を向けられるのだが。

≪各会場、残った二名が次へ向かえます。共闘するもよし、独りで生き残るも良し。制限時間は五分、それ以上を過ぎた場合は多く退場させた方が突破となります≫

 そんな事情は知らんとばかりに、上はどんどん進行していく。
 そして、カウントダウンが始まり……戦いが幕を開いた。

「『バトルラーニング』起動」

 ルール上、『プログレス』そのものを持ち込むことは防止できない。
 俺の場合、上書きはできないが、予めインストールしていた能力だけは使える。

 こういったやり方もまた、小細工ではあるが反則には含まれない。
 つまり、俺が何者かと近づいてきた輩は容赦なく倒されていった。

「私は武器種に問わずあらゆる武術をできるからいいですが……彼らは苦労しますね」

 武器に関しては登録時に設定した武器を用意され、それ一本で戦う必要がある。
 飛び道具にも発射数に制限が課せられるなどして、絶対的優位は保てない。

 魔法使いはそういった制限が少ないが、そもそも誰もが使える魔法とは火力が低い。
 特に今回は無進化の魔法スキル使えない以上、効果的な技は限られている。

「さて、頑張ってください。どうか私に、敗北を教えてください」

 なんて適当なことを言いながら、ただ舞台の上をグルグルと歩き始める。
 当然、近づけば排除される……反撃を行う者が多かったが、彼らも反撃を受けていく。

 それなりに強い武技で抗う者もいる……しかし、『バトルラーニング』の方が上手だ。

「剣に槍に弓に、そして銃に……どうぞお好きなように。それでもなお、届きませんが」

 挑発、煽り、なんでもござれ。
 借り物の力で調子に乗る俺は、ヘイト値を買いまくりながら無双する。

 残念ながら“オートカウンター”は使えないため、反撃も受け流す程度だ。
 できるのはこれまでの戦闘データから、最適な動きでまったく同じ型をなぞること。

「おや、魔法ですか……それも無駄です」

 飛んでくる魔弾を、最小限の魔力を宿した拳が跳ね除ける。
 魔力系の技は、核となる部分さえどうにかできれば対処可能だ。

 もちろん、大抵のやり方では難しいが……基礎しか今は使えないからな。
 比較的に簡単に成功し、魔力を失った参加者を丁寧に退場させるのだった。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品