虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
強者の宴 その24
「何か御用でしょうか──【勇者】様?」
ついてきていた気配のある方へ、まるですべてを分かっているかのように話しかける。
……俺自身には分からずとも、気配の放つオーラで殺されているので知っていた。
今の俺の体はエクリの物だが、憑依中は俺の能力値に合わせることができる。
意図的に弱体化することで、『生者』の権能を用いて死に敏感となることも可能だ。
待っているとしばらくして、その気配は俺の下にやってくる。
先ほどまで【魔王】と死闘を繰り広げていた、星剣の執行者たる【冒険勇者】だ。
「驚いた……どうして分かったのかな? いや、ここに来た理由まで気づいているね」
「単純な話です。【魔王】さんに、何か言われておりましたので」
「それが君に関する話だったと?」
「勘でしたが……実は私、とても運が悪い方でして」
冗談交じりにそう告げると、一瞬キョトンとした表情になる【勇者】。
だがクスリと笑みを浮かべた後、再びその顔は真面目なモノとなる。
「うん、君はユニークな人だ。そして、だからこそなんだね」
「……何が、でしょうか?」
だからこそ、それは俺に関するナニカを知り得ているということだろう。
しかし、俺は【勇者】に知られて困るようなことなど無いし……いったいなんだ?
「僕が【冒険勇者】として、星剣の創造者であるこの星に与えられた命は二つ。一つ、この世界の『悪』を間引くこと。そして──この星の『害』を処理すること」
「害悪への対処ですか……しかし、そこに私がどう関わっているのでしょう?」
「単純に『侵略者』のような存在を相手取る場合が多いんだけどね……ごくまれに、未接触の星から生命体がやって来るんだ。取るに足らない相手が多いんだけど……そうじゃない個体も居る」
「…………」
話の流れがなんとなく読めた。
なるほどな、それなら【魔王】が【勇者】に助言することができるわけだ。
「驚いたよ。君が星渡りの民だということははすでに分かっていたけども──【救星者】でもあったなんてね」
「偶然ですよ。星渡りの民は、始まりの地を選ぶことができます。しかし、私にはそれすらできず……何もない場所が、私の原点となりました。それでも足掻きに足掻き、星の開拓を終えたとき──そうなっていました」
「……ますます驚きだね。君の話には嘘が無い、つまり神話よりも上、創世記のような話が真実ということになるよ」
「信じるも信じないも、【勇者】様にお任せしましょう。ただ、私は自分の話を真実だと信じておりますので」
ここまでは順調に話が進んでいる。
しかし、油断してはいけない……だって妙に光っているんだもん、星剣が!
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