虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その23



 俺の答えは間を取った曖昧なものだ。
 絶対を保証することなど無い、未来を後回しにしているだけ。

「わだかまりの原因を、一つずつ解消していきましょう。それらがすべて無くなったときこそ、人族と魔族の和解が始まるのです」

『それが我が友の理想か?』

「理想……とは違います。これはあくまで、可能なプランです。お二人とも、それができることは分かっているはずです。ただ、その過程が酷く困難で、どれだけの犠牲が生まれるのかもまた、理解しているのです」

 頭が冴えている『騎士王』と【魔王】。
 ある意味、両種族の代表者である彼らは俺の言葉が、不可能では無いと知っている。

 だがそれは、両種族が持つ他の主張すべての否定をし、それによって起きる軋轢へ対処しなければならない……過激派であれば、武力での抵抗だってするだろう。

「『生者』、其方も理解しているであろう。それがどれほど時間の掛かることか」

「そう、ですね。腹に溜まった思いは、簡単に拭えないでしょう。しかし、その可能性を初めから否定してしまえば、何も始まらないでしょう。たとえ今が無理でも、次代へ繫ぐ糧を用意する……それでも充分です」

 話はここで切り上がった。
 ただでさえ、時間は押していた……すでに異界の外は深夜帯、お開きの準備もしなければならない。

『──我が友『生者』よ。この時代に、星渡りの民が来訪したことには、何らかの意図があると思うか?』

「……そんなものはないでしょう。必然でも運命でも、ましてや神の采配とやらでもないでしょう。出会いは偶然、ただそれだけなのですから」

 そりゃあ死なずに働ける休人が、何らかの変革をもたらすことはあるだろう。
 しかしそれは、時間を掛ければいずれ原人でも行うことができたこと。

 しいて言うなら、俺たちは促進を求められているのかもしれない。
 進むことを促した果てに、いったい誰がどういった得をするのか……。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 異界の夜空に花火が上がる。
 事前に用意されていたのだろう、魔法や火薬で仕込まれたソレらは勢いよく発射され、色鮮やかに花開く。

 ファンタジー素材も用いているようで、二本でも見たことの無いような不思議な花火も観ることができた……それもこれも、花火をこちらの人々に休人が教えたお陰か。

「……エクリ、準備はいいか?」

《問題ありません。いつでも行けます》

「何も無ければいいが、このタイミングが最適だからな……うん、レーダーが近づいてくる反応を掴んだな」

 会場である宮殿を離れ、その気配がついてきていることを確認。
 ……さてさて、この宴の最後を楽しむとしますか。


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