虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その21

連続更新をしましたので、まだの方はぜひそちらから
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 ついに、【勇者】を追い詰めたかと思えた【魔王】……だが、弾いたはずの星剣はなぜか心臓に突き刺さっていた。

「あれは、いったい……」

「星剣は最強の武器、そしてありとあらゆる武器に通ずる原初の一振り。それゆえに、過去に存在した武器の能力を発揮することができるのだ」

「なんというチート……なるほど、必中の性質を得たわけですね」

「ほう、『生者』の世界にもそのような伝承があるのか」

 心臓に命中する槍、手放しても勝手に戦う剣など……人の想像力は素晴らしい。
 北欧神話やケルト神話の存在が確認できている以上、間違いなくアレが存在する。

「心臓を破壊されれば、普通は死ぬ……しかし、奴は死なぬだろうな」

「ええ、【魔王】はそれほど軟ではないようですので」

 ドッペルゲンガーの【魔王】なので、新しく臓器を用意することも可能なのだろう。
 だが、今はそれをすることなく苦しそうな表情だ……原因は刺さったままの星剣。

 流れ込むその星の力が、何かを阻害しているのだろう。
 その間に【勇者】は星剣の柄を握り──聖なる力を解き放った。

「これは……決まりましたかね」

「ああ、終わりだな」

 誰もがそう思ったのだろう。
 誰よりも【魔王】の近くにいる【勇者】もまた、確信したようで笑みを浮かべていた。

 ──だが人それぞれ、どちらが勝者と考えているかは異なる。
 二人の足元で蠢く黒いナニカ、それに気づけたかどうかだろう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 あの後、切り離していた部位から奇襲を仕掛けて勝利した【魔王】。
 星剣の力はたしかに最強だったが、決して勝てないわけじゃない。

 そのことは、これまでの『騎士王』が証明してくれている。
 悔しそうな【勇者】に【魔王】は何やら耳元で囁き──その場から消えた。

『──どうであったか、今回の演目は?』

 消えたはずの【魔王】の声が、俺の肩の辺りから聞こえてくる。
 先ほどの切り離し同様、俺の下に予めバックアップを置いていたのだ。 

「ええ、とても。ところで、収穫は何かございましたか?」

『……どうやらあの力そのものは、星剣に紐づいたものなのだろうな。奴を投影しても、意味が無いというわけだ』

「職業に変化を促す武器……ですか。その理論が他の武器にも応用できるのであれば、私としてもぜひ研究したかったですね」

『無理であろうな。そこの『騎士王』が語った通り、アレは原初であり始まりの一振り。刻み込まれているのだろう、星の理が』

 何食わぬ顔(?)で『騎士王』にも声を掛ける……うわぁ、向こうも向こうでいつもと違って仕事の時の顔をしてるよ。


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