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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その18

連続更新です(06/08)
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 星剣を操る【勇者】に対し、俺が打ち上げた魔剣で抗う【魔王】。
 純粋な技量で言えば模倣による蓄積で優る【魔王】だが、総合的には【勇者】が上。

 しかし、足りない部分を過去の英傑たちで補うことで繋いでいる。
 戦いは続く、互いを否定することが定められた二人ゆえに。

「見てください、もう間もなく決着となるでしょうか……先ほどは【聖女】の腕だけでしたが、さまざまな部分を出してきましたね」

 元より【魔王】は複数の魔物の特徴を表に出し、己をキメラの【魔王】と偽っていた。
 しかし、今は違う……他者への変身を行える魔物の【魔王】だと認識させている。

 俺の解説を聞いている『騎士王』などは、とっくに気づいていたかもしれない。
 だが、状況が変わっているのだ……時代に合わせて、【魔王】も変化していった。

「あの腕……! まさか『生者』、移植とはそこまでのことを考えてか?」

「いいえ、まさか。ですが、気になってはいたところですね……正確に言えば、模倣ではなく転写のようなものですので。その対象がどこまで含まれているのか、興味深い案件でしたよ」

 その腕、その先にある手の甲。
 そこには宝石のような装置が埋め込まれている──『プログレス』、唯一無二の能力の根源を【魔王】が宿している。

 とはいえ、それは【魔王】の物では無い。
 ついでに言えば、この会場の誰かが有している物でもない……事前にこうした状況を見越してか、用意された魔族の物だった。

 それを【魔王】が起動すると、宙にその腕と同じ物が生みだされる。
 プカプカと浮かび、手をグーパーと握っては開いて感触を確かめていた。

「アレは『フロートアーム』、本人の腕と同じ物を第三の腕として操ることができる能力ですね。本来であれば、せいぜい腕が増えるのが限界……しかし、【魔王】は違います」

 俺の言葉を裏付けるように、ちょうど新たな行動を取る【魔王】。
 それなりに成長しているようで、十本生えた腕──それらを他者の腕に切り替える。

 あくまで腕はその魔族の物だったが、起動者は紛れもなく【魔王】その人。
 つまり影響を受けるのは【魔王】で、彼の性質を腕もまた有している。

 はっきり言ってしまえば、それぞれの腕でまた異なる権能を使うことができるのだ。
 さすがに権能を再現し続けることは難しいだろうが、技量をなぞるくらいはできる。

「一人軍隊、複数でやるべきことを【魔王】は一人で成し遂げることができます。軍を率いる必要も、もしかしたら無いのかもしれませんね」

 魔法職らしき腕が【魔王】に支援を施し、準備は万端──ついに最終決戦の幕が開く。


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