虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その12



 予期していたことは、結局避けることができなかった。
 要するに──矢面に立たされ、説明を要求されている。

『…………』

「では、ご説明いたしましょう。ご質問は、説明を終えた後にでも」

 先ほど『騎士王』に語ったことを、そのまま他の者たちに伝えていく。
 その裏で、『SEBAS』と段取りの打ち合わせを済ませる。

 この場には『超越者』だけでなく、最上位職業の持ち主たちもいるのだ。
 そして、強大な力を持つ者が現れることを恐れる者も……彼らは目を光らせている。

「──このように、今回の『プログレス』は能力を必要としない者たち用の物です。しかし、能力の有無とそれ以外のシステムは関係なく機能しておりますので……単純な便利アイテムとして用いることもできるでしょう」

 説明を終えて、まずは一礼。
 頭を下げ、再び顔を上げたとき……向けられるのは鋭い視線。

「質問はそうですね……手前の方から順に答えていきますよ」

 そうして、始まる質疑応答。
 当然ながら、どうしてこれを用意したのかという質問も挙がった。

 それ以外にも、そもそも『プログレス』とは何故創られたのか、とか『超越者』だけが使えないのはなぜか、それを俺が利用しているのは何故なのか……など沢山だ。

「創ったのは探究心故に。できる才があるのならば、それを試したい……そう思うのはごく自然なことだと思うのですが?」

「『超越者』のみが使えなかったのは、構築したシステムを権能として組み込んだからです。すでにそれを有している『超越者』たちでは、新たに能力の発現ができないのはそのためです」

「もちろんそれは企業秘密です。ただし、能力が使えないという法則は私にも当て嵌まっていますよ。魔法を使えぬ者が魔道具を用いるように……ええ、やり方次第ですよ」

 といったように、『SEBAS』にも問題ないと言われた返答をしていく。
 それでいて、ヒントをあえて出すことも欠かさない……注目はされた方がいいらしい。

「他に質問は……無いようですね。では、これで説明は──」

「いや、一つ良いだろうか」

「……何でしょうか、『騎士王』?」

「『プログレス』が『生者』の理想へ到達したとき……それは何を意味するのか? これだけは明確にしてもらおう。事と次第によれば、放置するわけにはいかなくなる」

 まあ、最強に至った能力を悪用する……みたいな展開だろうか。
 さすがは『騎士王』、周りのことを考えてあえて口に出したようだ。

「──それはきっと、『超越者』とその他の者たちがある程度対等になったとき。権能の能力も、『プログレス』の到達点や理想、憧れと呼ばれる時期ですね。そうなることを、私は望んでいます」

 その答えに更なる質問は続かず、説明会は終わりとなった。
 ……信じてくれたかあえて無視したか、この場の者たちの反応はどうなんだろうな。


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