虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その11



 今さらながら、主催者とは誰なのだろうと考えていた。
 話の流れ的に来たものの、招待状にもそういえば書かれていなかったなと思い出す。

「むしろ、話を通さないで突発的にやった方が……とも思うな」

「いったい、何を考えているのだ?」

「……貴方ですか、『騎士王』さん。いえ、いっそのこと主催者に内緒でサプライズでもしてみようと思っていましてね」

「止めておけ。企画があるのであれば、しっかりと通しておいた方がイイ。とはいえ、その伝える先が分からないのだったな」

 どうやら、『騎士王』は主催者について何か知っているようだな。
 まあ、招待状を渡しに来たのも『騎士王』だったのだ、おかしいが不思議では無いか。

「直接お前を主催者の下へ案内したいが……無理そうだな」

「そうなのですか?」

「単純明快に言ってしまえば、ここには居ないのだ。お前同様、外部より干渉してここに赴いている。人形を介しているよりも、より高度な方法でな」

「たしかに。あのお二人の世界であろうと、成し得ているその技術に感心しますよ」

 異界である『千変』と『万化』のこの世界に、外部からの干渉をするとは……。
 俺の場合は有線で繋いでいるようなものだが、その例なら主催者は無線だ。

 完全に遠隔でやっている分、向こうの方が難易度は高い。
 ぜひとも、その技術を学ばせてもらいたいとも思うが……難しいだろうな。

「とりあえず、何をしようとしているのか話してくれないか? 可能であれば、こちらからも打診しておこう」

「……『騎士王』さんにそう仰っていただけるのであれば。分かりました、お話します」

 隠すようなことではないので、俺はそれを『騎士王』に渡す。
 腕時計のような形をした、しかしそれ以外の機能も内包したアイテム。

「率直に言いますと、こちらは『超越者』用の『プログレス』です」

「! ……それは、どういうことだ」

「ええ、能力の発現はございません。そちらの機能をすべて排して、それ以外の休人が用いている権能を組み込んでおります。どこでも使える通信、アイテムの保存、生存の確認なども可能ですね」

「話には聞いていたが、その一つ一つが戦力バランスを覆しかねんな。【奴隷王】が休人の隷属化を図っていたが、アレが上手くいっていたら……加速的に争いが起きていたかもしれんぞ」

 休人の隷属はシステム的に保護されているため、ほぼ不可能になっている。
 ……システムに頼らない、原始的な方法で隷属させるなら話は別だが。

「ともあれ、こちらの配布が目的です」

「……そうか、これならば配っておいた方が良いだろう。分かった、少し待て」

 そう言い、この場から離れる『騎士王』。
 この後の展開は、なんとなく分かる……不味い、阻止しなければ。


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