虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その07



 はっきり言って、想像を絶する死闘だったと思う。
 互いに制限を設けているとはいえ、攻撃がぶつかって衝撃波が飛ぶのは異常だった。

 いや、それ自体ならギリギリ可能かもしれない……が、互いに身体強化などをいっさいしていない状態で、それらを実現している。

 それは体の動きを極限まで制御し、力の漏れをゼロにするからこそできる神業。
 さすがは【闘神】な『拳王』と『超越者』最強の『騎士王』である。

 そして決着はあっさりと。
 拳を全力で振るっていた『拳王』に対し、『騎士王』は聖剣の力をほんの少しだけ解放する──それだけで『騎士王』が勝った。

 正確には、その残滓のような一撃を防ぐために『拳王』が捨て身の防御を取ったのだ。
 おそらくそうでもしないと、この世界ごと大惨事になっていたかもな。

「アレが真の実力の一端か……解析は?」

《失敗しました。データ計測も、一瞬で数値がエラーを起こしました》

「まあ、仕方ないか……エクリはアレを見てどう感じた?」

『恐ろしいほどに力を感じられます。アレをモノにするには……膨大な経験と時間が必要になるかと』

 これと同じく、星鑓のデータも持っているのだが……そちらもエラーだらけだ。
 今なら調べられるかもと思ったが、やはり『騎士王』攻略はそう簡単では無いな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 それからは、舞台を使ってさまざまな組み合わせで戦い始める強者たち。
 互いに何かを賭け、本気で力を振るう……やはり誰もが、何かしら溜まっているのか。

 生産系の人々も、どちらが勝つかを賭けて楽しんでいる。
 ……俺は『SEBAS』も居るので、大変儲けさせていただいております

「さて、次はっと──」

「貴方が『生者』か?」

「はい、そうですが……貴方は?」

 現れたのは、細マッチョのイケメンだ。
 ただ、その雰囲気がどことなく『闘仙』を思わせる感じで、なんとなくこの先の展開を分からせてしまう。

「私は『一撃』を冠する『超越者』。貴方とぜひ戦いたい」

「……理由をお聞かせいただいても?」

「当然だな。理由は貴方が、数々の強者たちに打ち勝ってきたからだ。私もまた、そんな貴方と戦ってみたいと思った。礼は弾む、だから一勝負だけ頼みたい!」

 話を聞く限り、俺のメリットはゼロだ。
 彼の願いは自分の全力を振るいたいとか、そういう感じだろうか。

「ええ、構いませんよ。その代わり、こちらからもいくつか条件を提示させていただきたいのですが」

「ああ、構わない。それでいいとも」

「では、その内容ですが──」

 そしてルールを決めてから、俺たちは舞台へと向かうのだった。
 ……これで得られるアイテムは、もしかしたら報酬以上かもな。


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