虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
強者の宴 その06
──あの後、俺たちはすぐに離れた。
結局のところ、どうすることもできないのが現実である。
俺も俺なりに手を出すつもりだが、最後に決断するのはやはりルリたち自身。
もちろん、軽い牽制程度はしたものの、それで止まるとも思わない。
だが、これで切っ掛けはできた……介入自体はできるだろう。
「ん? なんだ急に……音が流れ始めたな」
『──御来客の方々へお知らせです。ただいまより、特別イベントの御時間となりましたので、会場に若干の揺れが生じます。会場の中央を空けてください』
「……とりあえず壁際に行くか」
アナウンスの声に従い、中央から離れた場所へ移動。
それからしばらくして、会場に微震が起きると──変化が始まる。
「おおっ、アニメとかで定番のヤツだな」
目の前で起きている事象を端的に述べるのであれば──白亜の宮殿が割れた。
左右にゆっくりと分かれ、その裂け目から巨大なステージが出現する。
宮殿に合わせたのか、古代コロッセオのような舞台。
内部の様子は『機械皇』が提供したのか、映像機器によって中継されている。
『見ての通りのコロシアム、ただいまよりこの舞台では自由に模擬戦が可能となります。内部での出来事は外に出ればすべて無かったことになります……つまり、どれだけの力を振るっても大丈夫なのです!』
休人であれば、[PvP]の機能で簡単にできることだが……原人には難しい。
さすがに『プログレス』とて、未だに生死関係は完全なフォローができていないのだ。
だがまあ、ここに居るのは世界でも有数の実力者たちばかり。
それは戦闘面だけでなく、生産面でも……力を合わせればできないわけじゃないのだ。
『まずはデモンストレーションと参りましょう! それでは『騎士王』様、『拳王』様は準備をお願いします』
聞き覚えのある名前が二つ並んでいた。
すると、コロシアムを映す中継映像の中に彼らの姿が現れる。
聖剣を腰に下げた『騎士王』と、何も持たずに堂々と歩く『拳王』。
彼らは数度言葉を交わすと、互いに武器と拳を構えあい──闘いを始める。
「最強の『超越者』と【闘神】な『拳王』。はてさて、どっちが勝つのやら」
《完全な全力ではない以上、先ほどの会話で決めたルールによるでしょう。戦闘数に限れば、『拳王』にも可能性はございます》
「……その言い方だと、やっぱり『騎士王』の方が優勢だな」
ほとんどルール無用みたいなので、つまりはそういうことだ。
同じ『超越者』同士の戦いならば、間違いなく彼女こそが最強なのだから。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
310
-
-
56
-
-
15255
-
-
27026
-
-
63
-
-
3
-
-
2288
-
-
841
-
-
159
コメント