虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

招待状 後篇



 招待状が導くのは、かつて一度だけ訪れたことのあるとある異界。
 ありとあらゆる概念が混沌とした、ごちゃまぜな世界──『千変』と『万化』の領域。

 どうやら場所を提供したようで、座標として記録していたポイントと一致していた。
 いったいどこでパーティーをするのか、正直思い当たらないが……それは置いておく。

『──相変わらず、いろいろとファンタジーな場所だよな』

 招待状を使えば簡単に転移できる……が、あえて俺はいつもの転移装置で移動した。
 直接会場に飛ばされるよりは、周囲を巡ってから行きたかったのだ。

『ついでに素材の回収もしたかったし。頼めるか、エクリ?』

「お任せください。『SEBAS』様より、プログラムを構築していただきました」

『そりゃあ頼もしい……擬似スキルの実験にもなるし、頑張ってくれ』

 エクリは:DIY:ではなく、【生産勇者】の権能で生産結果を強化して生みだされた。
 部分的に、特典由来の素材だけは:DIY:だが……まあ、今はいいだろう。

 人形であり機体、そして人造人間。
 ありとあらゆる生産技術を詰め込んだ、まさに俺という生産者を体現した存在──それこそが『終従人形エクリエン・ドール』のエクリだ。

 そんな彼女には、『機械皇』と語らった擬似的なスキルを仕込んである。
 武技やらシステム的な特殊効果などは無理だが、行動の最適化などは可能だ。

 要するに、『バトルラーニング』をあらゆる行動に適用している。
 スキルがプログラム名で、簡略化した本来のプログラムをそのままコピーした感じだ。

『……うん、動きや取る技術的には上手くできているな。補正なんかはどうだ?』

「特にございません。採取スキルを起動していますが、一定確率での複数ドロップやらレア化なども確認されておりません」

『実際、ただ採るだけってのは誰でもできることだしな。明確に差別化するため、そういう補正が付いたのか……技術でどんな素材でも採取可能なら、それも仕方ないか』

 ありとあらゆる素材も、決してスキルが無いと採取できないわけじゃない。
 採取スキルの補正は、あくまでも補正……不可能な事柄を可能にしてはいないのだ。

 この不思議空間で育つ貴重な素材の数々。
 どれもこれも採取難易度は高いのだが、最適化されたプログラムに従い、エクリはそれらを採取していく。

「創者様、周囲の素材は採取し終えました」

『ご苦労様……そうだな、もう少し擬似スキルの実験をしておこう。前回同様、何が起こるのか分からないからな』

「畏まりました」

 あとで錬金術や調合の方も試しておこう。
 招待されたからには、ちゃんとできることはやっておかないとな。


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