虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

加護の危険性 中篇



 神・世界樹の洞には神像が設置してある。
 そこには女神プログレスの神像も置かれているので、言葉を交わすことが可能だ。

 普通なら難しいだろうが、いろんな要因でここならば簡単にできる。
 一番の理由は、ここが神・世界樹の中だからだろう。

 直接姿を現さずとも、天啓という形で話せばいいのに……彼女はご主人様だからと、わざわざ降臨してくれた。

「お久しぶりですね、ご主人様。本日はどういったご用件でしょうか?」

「ちょっと確認したいことがあってな……けどその前に一つ、祝福の進展はどうだ?」

「あっ、そうでした──パンパカパーン! ご主人様の加護レベルが1上がりました! これによって、再現した能力が初期段階と一段階目から選択可能です!」

「まあ、それは良かった。けど、マスター能力のコピーはまだまだ先みたいだな」

 彼女から得ている祝福の効果なので、その度合いも彼女から聞くことができる。
 祝福は[ステータス]から確認しても、少し表示が曖昧だからな。

 ちなみに、加護レベルという概念においてマスター能力はレベル10に該当する。
 今は2なので、これから加速的に増加するであろう必要経験値に億劫になったよ。

「じゃあ、本題に移ろう。とりあえず、お前の存在を広めるようになったけど……俺以外でも、加護の恩恵は受けれるんだよな?」

「当然です。いかにご主人様の眷属であろうと、神としての公平な立場も持ち合わせております!」

「……持ち合わせているって。いっしょに持つのはどんな考えだ?」

「ご主人様、命運神様、そして創造神様たちのお役に立つことですよ……あっ、とてもいい奥様ですね」

 ルリには神像を神殿に置いてもらう際に、いろいろと説明はしてあるからな。
 いつの間にやら、命運を司っている彼女をお互いに支え合ってほしいよ。

「自慢の妻だからな。それより……じゃないけど、その加護についてだ。俺はともかく、使ったら使用者に悪影響が出る能力なんかもあるだろう? その点、プログレスはどう考えているんだ?」

「なるほど、そのことでしたか。結論から申してしまいますと、そういった能力はこちらで制限させてもらっております。必要ゆえにオーダーしたのであれば、確認したうえで承認させていただいてます」

「……それって大丈夫なのか?」

「限界突破も、立派なデメリットを持つ能力です。ですが、それ無くしてどうにもならないのであれば、使わざるを得ない……そう思われませんか?」

 まあ、ショウのことも混ぜたことを言われると弱いな……もう少し詰めて、じっくり決めていかないと。


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