虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

加護の危険性 前篇



 アイプスル 神・世界樹

 配れば配るほど、『プログレス』が持つ可能性は増えていく。
 それは間接的に俺の強化に繋がり、まさにうはうはというヤツだ。

「凄い奴が凄い能力に目覚めるのか、凄い能力に目覚める奴が凄くなるのか……後者はありえそうでも、前者は絶対じゃないな」

《原人の場合、最上位職へ就職する際は条件の他に適性などもございますので、就いた者がほぼ確実に優れた者となります》

「たしか休人は、EHOの初期説明で性別制限のある職業以外なら何でも就けるって説明されているんだよな? まあ、性別限定のヤツは名称が違うだけで、ほぼ同じ能力の職業があるらしいけど」

《旦那様が就くことができる職業であれば、【聖者】と【聖女】でしょう。旦那様は男性であるため【聖者】、奥様であるルリ様は女性なので【聖女】です。前者は浄化、後者は回復に若干多めに補正が入っています》

 解放はしていないが、いちおうリストには開放されている職業の【聖者】。
 ……必要な経験値が【勇者】と同じくらいなので、全然解放する気にならない。

 まあ、そんな職業だが、本来は極めて難易度の高い条件が就職には課せられている。
 俺は[称号]と“職業系統樹”で大幅に省略しているが、原人はそのうえ適性も必要。

 それ以上に難しい最上位職業に就く者たちに、才能が無いはずがないのだ。
 今回渡した『プログレス』も、相応に才ある者たちが使うことになるだろう。

「マスター系の能力も、そんな感じで目覚めていってくれればいいのにな……」

《残念ながら、新規の発現者はおりません》

「ポンポンと目覚める方が難しいのかもしれないな。魔石を使うやり方にせよ、純粋な想いで昇華させるにせよ、運の勝負なのかもしれない……ルリならやりかねんが、ルリの能力はある意味マスター能力以上の性能だし」

《ほんの少しでも運の介在を許せば、奥様の独壇場となりますので……そうですね、あの能力は奥様にしか扱うことのできない能力でしょう》

 俺も情報自体は把握しているので、再現して使うことはできる。
 ……が、再現しても自滅するだけの能力と化していた。

 あくまでその能力は、ルリが使うから運用できているピーキーな代物。
 彼女以外が触れるのであれば……死を以って、それを贖わなければならなくなるのだ。

「プログレスの力で他者の能力が借りられたとしても、そうして死んじゃうこともあるかもしれないのか……うん、気を付けよう」

 そういったことを確認するために、ここに来ているのだから。
 本人……というか本神に、そのことを訊こうじゃないか。


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