虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産ギルド会議 その10
『神……それも未知であった『プログレス』という概念にかい?』
『嘘ではございませんよ。そしてそれは、私の[ステータス]こそが何よりの証拠。人々が多く周知し、そしてその存在を神々もが承認した。それゆえに、彼の神は降臨なされたのですよ』
要するに、誰もが認めるスーパースターといった感じだ。
他の有名人からも知られているので、その周知速度も速い……といった風に。
いちおう証明するために、普段使いの偽装魔道具の設定を変更しておく。
祝福欄のみを開示して、周りの者たちが視れるようにしておいた。
『──たしかに、載っているね。偽装スキルで祝福欄は偽れないし、そもそも存在しないものは載せられないはず……ふむ、本当に存在するのか』
……まあ、『加護』ということにして誤魔化してはあるけども。
俺たちの人形は憑依先の情報が載るので、こういう確認も手っ取り早くて助かる。
『彼の神の存在を信じていただけたようで。ちなみに神像は始まりの街に置かせていただけましたので、よければそちらへどうぞ』
『アンタ、神像の製作が許されているの?』
『ええ。何柱かの神々より、依頼を賜りまして。詳細はお話できませんが、そのお陰であるかもしれませんね』
数学者を名乗る【数秘術師】でも、これには驚いている……のかもしれない。
人形越しなので、正確な反応を意図的に隠されていて分からないのだ。
『加護の効果は『プログレス』の能力を、進行度に応じた性能で再現できるというもの。行使できる能力、できない能力などがございますが……『超越者』である私でも、能力の行使ができます』
『──もうええじゃろう。それで『生者』、結局お主は何をしたいんじゃ?』
『鍛冶師さん……その答えは、もう語ったようなものですよ。ごく一部の者のみに広めていた『プログレス』をより認知してもらい、その神格を高めていただきたいのです』
この話、嘘では無いが矛盾も存在する。
おそらく気づいている者もいるだろうが、これ以上のことは言わないし話されても意味が無いと分かっているはずだ。
……ついでに言うと、『プログレス』の解析をしたい者もいるかもな。
この場にいる者たちは、全員が全員生産職の頂点に君臨する者たち。
──飽くなき探究心があるのだ。
『──では、今回はこれまでということにしておこう。ちょうどギルド長の方も、話が終わったようだしね……『生者』君、君からの贈り物を楽しませてもらうよ』
『ふむ、儂も例の鉱石を楽しむぞ』
『ふふふっ、新しい紋章……』
『…………』
ちゃんと薬師も分かっているだろうが、直接的には無いと同じなので何も言わない。
そうして今回の生産ギルド会議は、幕を閉じるのだった。
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