虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産ギルド会議 その09
自己紹介を終えて、ようやく会議は本題に移る……その前に戦ったり、お土産という名の賄賂を渡したりと、いろいろとやったけど気にしない、気にしない。
司会進行は数学者がやるようだ。
まあ、能力的に一番向いているのは、他の者たちも納得だろう。
『『生者』君を呼んだのは他でもない、君から貰う予定の『プログレス』についてだ。まさか、それを君が僕たちに提供してくれるとは思ってもいなかったけどね』
『驚いていただけたのであれば、私としてもサプライズを企画した甲斐がございました』
『実際、アレは何なのよ? ほぼ誰でも使える、誰とも被らない特別な力……アンタはそれを、何のために広めたの?』
印も、言葉にはしていないが他の者たちも気にしている。
それだけ『プログレス』が世界に与える影響は、尋常では無いということだ。
そのことは『騎士王』が、何度も言っていたことなので重々承知している。
本音を言うのは簡単、しかしそれでは信用は得ても信頼はされないだろう。
『しいて言うのであれば……そうですね、私が休人であればこその行いです。敵わない相手が居て、叶わない願いがある。それを救おうとする者がいて、掬えないモノがある。そこに、『プログレス』が関われば──』
『少なくとも、対魔物に関しては改善されるだろうね。魔物に適合した例は聞いていないし、仮に使えても彼らでは参照できるデータが少ない。だが、対人の問題に関してはむしろ悪化してしまうのでは?』
『かもしれませんね。ですが、それはこの世界でこれまでも起きていたこと。何もせずとも死者は生まれていた、『プログレス』の影響を話しても結論は出ませんよ』
『だろうね。僕もそこまで言いたかったわけじゃない。だが、一つだけ知っておきたいことがある──君はその力で、これから何を成すんだい?』
俺が『超越者』であり、『プログレス』を使うことができないことは分かっているはずだ……つまり、それを理解したうえで何をするのかと訊いている。
『君ほどの知恵があれば、あるのだろう? たとえ君自身が『プログレス』を扱えなくとも、使うことができる術が』
『……ええ、ございます。そしてこれは、どの『超越者』であろうとも、擬似的に能力の行使が可能となります』
周囲の気配が一瞬強まった。
そりゃあ、根底からこの問題が覆るような話だからな。
『──ありとあらゆる概念に神が存在するように、『プログレス』にもまた神が宿っているのですよ。私は彼の神と交信し、授かったのです……この身でも、恩恵を扱うことのできる術を』
そう、困ったら女神たるプログレスに擦り付けるのが一番だ。
決まっていたシナリオ通り、進められているようで何よりである。
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