虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産ギルド会議 その07
再び指が鳴らされ、舞台は元に戻る。
この場にいる者たちは、俺たちの戦いからいろんなことを暴いただろう……生産者としての視点で、じっくりと。
『改めまして。『生者』です……何か愛称を決めるのであれば、ぜひこちらを。私の権能は、偉大なる死神様より賜ったモノ。それを差し置いて、別の名を名乗るのは……』
『ふんっ、構わん。儂のことは鍛冶師でよいぞ、『生者』。武を交わし合った仲だ、気安く呼んでええぞ』
『鍛冶師さん……よろしくお願いします』
人形ではあるが、握手をする。
宝石の硬い感触を覚えるが、指の先まできちんと力を加えられていた……どんな技術があれば、そこまで繊細に仕込めるのやら。
和解(?)が終わり、ようやく自己紹介の続きが始まる。
席に着くと、今度は勝気な少女の声を出す人形が立ち上がった。
『それじゃあアタシの番よ。【秘紋使い】、刻印なら誰にも負けないわ! 気軽に呼ばせる気は無いから、せいぜい励みなさい』
『アヤツは『印』とでも呼んでやれ』
『よろしくお願いします、印さん。あっ、お近づきの印に……洒落じゃありませんよ? とにかく、お渡ししたいものが』
せっかくなので、彼女に二つの資料を用意して差し出す。
何かと軽く目を通し……ギョッとし、すぐさま読み漁り始めた。
『ルーン文字と竜紋。それがここまで詳細に載っている!?』
『直接赴き、学んできました。私は生産者と言うには異端で、『生者』としてさまざまな場所を訪れていますので。少々の縁を結ばせていただきましたので、了承を得たうえでいくつか技術を教わっています』
『な、なかなかやるじゃない……いいわ、特別にあのその変な呼び方を許してあげる』
『ありがとうございます』
渡した資料は彼女の言った通りだが、あくまで基礎しか載っていない。
複合ルーンや特殊竜紋は、専用の能力などが無いと使えないらしいからな。
彼女の【秘紋使い】には、そのありとあらゆる条件を無視する力がある。
解析するためにも、彼女の協力は必要不可欠なのだ。
『あっ、鍛冶師さんにはこちらを──とある秘境で得た、霊気を帯びた宝石です。物体でありながら霊体でもあるので、その性質を生かしていただけると幸いです』
『…………』
『あ、あの……鍛冶師さん?』
突然黙ってしまった鍛冶師。
アイテムの受け渡しは、後ほどギルド長に頼もうと思っていたのだが……もしかして、何か問題でもあったのだろうか?
そう考えていると、最初に俺に声を掛けた好青年っぽい人形が理由を教えてくれた。
『──彼は価値のある宝石や鉱石を見ると、その使い道をすぐに考えてしまうんだ。あ、僕は【数秘術師】、数学者とでも呼んでくれればいいよ』
『お願いします、数学者さん』
残された人形はあと一つ、沈黙を貫くあの人形は……いったい誰が動かしているものなのだろうか?
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