虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産ギルド会議 その06
『はいはい、それじゃあ準備するわよ』
女性の声を出す人形が指を鳴らすと、俺たちの席が突然大きく離れた。
俺と金属&宝石型の──【宝金鍛冶師】の人形だけが、なぜか中央に残される。
『助かるのう、紋の。ではお前さん、さっそく始めようか』
『……何を、でしょうか?』
『決まっておろうが。戦闘もできることは分かっておる、ならば互いにするべきことはただ一つじゃ!』
腕の部分が一瞬輝くと、その形状が歪んだ後──武器になる。
巨大な大剣を握り締め、人形はこちらにそれを突きつけてきた。
『『生者』、受けるの受けないの? 別にどうしても構わないわよ──そういうヤツだって勝手に判断するから』
『……ええ、ならば応えましょう。ですが、勝利条件を定めます。相手に触れれば勝ち、そうしてください』
『ふむ……まあ、ええじゃろう。というわけで、始めるとするぞ!』
そう言って、すぐさま大剣を座る俺の人形に叩き付けてくる【宝金鍛冶師】の人形。
俺はそれに反応、即座に人形へ思念を伝達して回避を行わせる。
『むっ? なんじゃ、その動きは……いかに伝導速度が速かろうと、それは異常じゃぞ』
『考察はそうですね……あちらのお三方にお任せしましょう。今、私たちは戦っているのです。余計な話は無粋、そうでしょう?』
『……小僧、なかなか分かっておるな。いいじゃろう、どのような絡繰りじゃろうと打ち砕いてやろう!』
まあ、ある意味御明察。
かつて、『機械皇』の下で覚醒が確認された能力『ハートギア』、それをこの人形の中には仕込んである。
そういった意味では、機械仕掛けなのは間違いない。
そして、『ハートギア』だけでなく、この人形だけの能力が備わっていた。
心があり、抱く想いがあるのだ……決してありえないわけではない。
そして、俺には『SEBAS』が付いている──能力の方向性も自由に選べた。
まあ、それに関する詳細は省くが、その応用でアレを使うこともできる。
そう、どんな動きでも対応できる戦闘学習の能力──『バトルラーニング』を。
『では、そろそろ反撃といきましょうか──“■■■・■■■:オートカウンター”』
『また動きが変わったのう……いいぞ、いいぞ小僧! 滾ってくるわい、もっとその力を見せよ!』
『ええ、存分にお楽しみください』
俺が行う動きは、北欧神話の皆さま方に協力していただいて武神の域に到達している。
いかに戦う職人さんとはいえ、その高みはまだまだ遠い。
結論から言えば、最後は俺が触れて勝利。
その結果に、まだ改良の余地があると悔し気に告げた【宝金鍛冶師】だったが……その声は、どこか楽しそうだった。
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