虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産ギルド会議 その05
人形が席に着くと、足元に刻まれていた魔法陣が光り輝く。
どうやら解析用の代物で、読み込んだ人形の情報を別の場所に出力するらしい。
かつて、俺が『天』たちの会議で用いたような代物だ。
アバターを人形で代用し、リモートな会議ができるようにしている。
「それじゃあ、ぼくは。別の場所で、ギルド長同士の会議があるんだ」
「……あの、お気をつけて」
「うん。君と契約してから、胃に厳しいことばかりだからね……もう、慣れちゃったよ」
「胃に効くポーション、今度処方して持っていきますね」
お世話になっているギルド長なので、最大限サポートはさせてもらおう。
……なんだか嫌そうな顔をしながら、この場からギルド長が居なくなる。
「『SEBAS』、リンクできるか?」
《アクセス完了──視覚情報のリンクを実行します。痛覚を遮断し、肉体の操作を旦那様の思念により操作可能とします》
「完全共有だと、何をされるか分からないからな……けど、相手がどこまでこっちを知ろうとするのか、それ次第だな」
目を閉じて、自分の視覚情報を遮断する。
閉じたはずの視界が映し出すのは、人形の目に仕込んだ魔道具が捉えた光景。
そこには四体の人形が配置されていた。
一体は金属の人形、特に宝石を器用に体のパーツにしたりしている。
残りの人形は詳細不明、ただしほぼ人間に近しい姿をしていた。
そちらはどれも、人形のように思えないほどに自然な挙動でこちらを見ている。
俺は滑らかな挙動でお辞儀をするよう、人形に思念を送る。
それを受信した人形は、命令通りに俺のイメージした動きで礼を取った。
『初めまして、特級会員の皆さん。私は……『生者』、『超越者』の末端に属させていただいている者です』
『うん、知っているとも。ツクル君、まずは席に着いていくれるかな?』
『……そうさせていただきます』
『甘いんじゃないの? その程度、生産ギルドに居ればすぐ分かるわよ』
まあ、登録したばかりの頃は『生者』では無かったし、バレる要素はあったか。
いずれにせよ、どうしても隠していたいわけじゃないからな。
魔法陣経由で声は届くので、彼らの言葉は雑音を交えることなく届いている。
好青年のような爽やかな声、勝気な少女の声……そして、ダンディな声が聞こえた。
『名前なんぞどうでいいわい。それよりも、お前さんのソレ……特典じゃな』
『『『…………』』』
『さすがは【宝金鍛冶師】に就いたお方、鋭い審美眼をお持ちですね』
『ふんっ、それだけならわざわざ言わんでおいたわい。お前さん、そこに何を籠めた?』
俺が核としたのは彼の言う通り用意されたユニークアイテム、そしてもう一つ。
そちらにも気づいたようだ……となると、この流れはアレなのか。
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