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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

生産ギルド会議 その04



 ギルド長は秘密もあるだろうから、と言いこの場から去る。
 残された俺が最初に始めたこと、それはアイテムの吟味だった。

「材料は凄いな……うん、複製が捗るわ」

 サポートドールも使い、神代魔道具の再現アイテム──複製の魔法陣──を用いてレアなアイテムをどんどん増やしていく。

 あらゆる素材を創造できる:DIY:の権能だが、それは自然に存在する素材に限る。
 魔物由来の素材は別枠らしく、いっさい生み出すことができない。

 なので、こういった機会でも無いと集まらず、素材のレパートリーが増やせないのだ。
 迷宮で用意できる素材にも限度があったので、本当にこういうサービスは助かります。

「さて、どんな方法でもいいから人形を作れと言われたものの……既存の人形でやるって方向は無いな」

 俺を待つ特級会員はどうだか知らないが、俺はありとあらゆる生産に通じている。
 そして、それらもすべて超一流……なればこそ、いっさいの妥協は許されない。

「つまり、全部の技術を使って人形を用意するわけだが……何を基盤にするかだな」

 金属の人形、木製の人形、機械仕掛けの人形、擬似生命体の人形。
 他にもいろいろとある人形だが、どの生産技術を用いるかで大きく決まる。

 悩みに悩んでしばらく……サポートドールが複製を終えたことを報告する頃、ようやく一つの考えに至る。

「まあ、せっかくだからチャレンジをしてみようか。『SEBAS』がくれたアレをベースにやってみるよ」

《畏まりました。それでしたら、どの生産方法を主に用いますか?》

「これを使ってみたいし、ベースはこれで。あとは全部を広く使って、纏め上げる形で設計してみてくれ」

 そう言って準備するのは、とある師弟が生みだしたアイテムの記録。
 エメラルド色の端末を握り締め、生産を始めるのだった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 ギルド長に連れられて、俺はまた別の部屋へと向かっている。
 時々チラリとこちらを見てくるのは、俺が完成させた人形を見ているからだろう。

「どうかされましたか?」

「……いろいろと言いたいことはあるんだけど、ここでは聞かないでおくよ。それよりもほら、ここに人形を置いてね」

「分かりました──席に着いてください」

《遠隔操作で席に着かせます》

 人形は俺の技術の髄を詰め込んであり、当然ながら人格も存在する。
 だが、生まれたばかりなので、今は学習期間中……代わりに動かしてもらっていた。

 そもそもバレたくないので、それは好都合なのだが。
 今は自我を奥に沈めてもらって、この後は俺が操縦する予定だ。

 ──さて、この後はどうするのかな?


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