虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産ギルド会議 その03
ギルド長が自分の机の引き出しを弄ると、何やら幾何学な紋様が部屋に広がった。
「……魔法陣ですね」
「少し話したことがあったと思うけど、いちおうギルド同士を繋げる道はあったんだ。それがこれ、この大陸のギルド本部に直通で行けるんだ」
「それは凄い……ちなみに、ギルドはどこにあるのでしょうか?」
「残念ながら秘密。表に出したら危険なアイテムの設計図なんかもあるから、教えることはできないね。まあ、君は特級会員だから、行きたいと思えば行けるさ」
まったく行きたいとは思わないが、いちおう覚えておこう。
俺は:DIY:の恩恵で、わざわざ設計図が無くとも望むモノを生み出せるからな。
そこを餌に出されても、喰らい付こうという気にならない。
ただまあ、一度行けば把握できるだろうから、その一回目だけは行こうと思えた。
「それじゃあ、最初の部屋に行こうか」
「……最初の部屋?」
その含みのある言い方に、嫌な予感を覚えたが……今さら逃げることはできない。
意を決して、ギルド長を追いかける形で魔法陣へ飛び込むのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
異界 生産ギルド本部
すぐさま解析を行った『SEBAS』により、そこが異空間に存在すると判明。
本部がどこにあるのか、答えはどこでもありどこでもない場所のようだ。
要となる楔は各生産ギルド、もし本部に何かあればどこかの生産ギルドと中身を入れ替えることができるらしい……正確には少し違うので、身代わりということではない。
「ここは? 何もない……というか、待機室のように思えますが」
「まさにその通りだね。こほんっ、生産ギルドは便利だよ。なんてたって、音声認識ですぐに行きたい場所へ行けるんだからね」
「どこでも行けるドア、といった認識でよろしいでしょうか?」
「……星渡りの民の世界でも、そういうモノが考えられているんだ。ま、まあ、とにかく行くよ──『資材室』へ!」
ギルド長の言葉を受け、目の前の扉が軽く明滅する。
その後、ドアノブを捻って扉を開く──その先には大量のアイテムが置かれていた。
「あの、なぜここへ?」
「ふっふっふっ、特級会員たちが行う最初の試練なのさ。ここにある資材は何でも使っていいから、これから行う会議に出す人形を完成させよ!」
「……もう少し詳しく」
「いや、これ以上は何もない。何でもいいんだ、君の言葉を何らかの形で伝えることができる物を用意すればいい。できないなら用意されている人形に、仕込みをするという形でも問題ないよ」
ノーと言いつつ、ちゃんと教えてくれる辺りは優しいギルド長である。
……そんな優しさに応えるためにも、俺も頑張るとしますか!
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