虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産ギルド会議 その02
「……おそらく、君の願いは叶わない。ぼくなりにサポートはするけど、それでも灰汁が強すぎるんだよ」
「…………」
出会ってすぐに自分の悩みを告げた結果、返ってきたのは冷酷な宣告だった。
場所は生産ギルドのギルド長室、見た目詐欺なキッズギルド長にご相談。
特級会員、生産ギルドの中でも特に有益な者たちに与えられた最上位の権限保持者。
現実で言うところの人間国宝、間違いなく最上位職業持ちか『超越者』なのだろう。
「君が『生者』として、非登録な特級に値する生産者たちに会っていることは知っているよ。『錬金王』、『機械皇』、『辻斬』……彼らと同じくらい濃いよ」
「そ、それほどとは……よく彼らを制御できましたね」
先ほど挙げられた人々は、ギルド長が言うところの『濃い』からこそメンバーとして登録できなかったわけだし。
しかし、彼らと同等の存在を制御するのは極めて難しいだろう。
他でもない、そんな彼らと関わってきた俺だからこそそう感じる。
「生産ギルドも必死に交渉したんだ。彼らの立場に付け入り、必要な物を提供し、何より心からの交渉術を試みて……コホンッ、いろいろと頑張ったんだよ?」
「なるほど、苦労しているのですね」
「……それで今回、君の提供したアレが彼らの目に入ってね。当然だけど、彼らが知ろうと思えば当然だけど君に辿り着く。そして、その結果がこれさ。何を求められるのか、それは彼らのみぞ知るってことだね」
アレ、とはもちろん『プログレス』。
誰でも……とは言わないが、ほぼすべての生命体が恩恵にあやかることができる特殊なアイテム。
特級会員の中にも、その恩恵にあやかる者が現れたのだろう……そして、逆にあやかれない者もいたのかもしれない。
そして、その『プログレス』についてもっとも詳しい人族は? と聞かれれば、間違いなく俺である。
どれだけ解析しようとしてもブラックボックスな以上、できることは限られていた。
つまりは俺を呼びだして、訊き出せる範囲で聞き出すということだ。
「……ぼくたちは彼らに、強く出ることができない。それができるのは、彼らと同等の権限を持つ者だけ」
「つまり、私だけということですか」
「だが、数の差もある。君がそのすべてを明かすことができないのは分かっている、だからこそ君の願いは決して叶わない。何かしらの妥協が必要となるね」
残念ながら、今回も俺は死んで死んで死にまくる運命にあるのだろう。
深く溜め息を吐き、ギルド長と共に約束の場所へ向かうのだった。
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