虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
友人の悩み 後篇
ログインをした俺は、面倒な気分になりながらも暗躍街へ向かう。
目的地はタクマの待つ情報屋、今では街の中心になりつつある中央区。
事前に知っていたので、監視の目を掻い潜り入ることに先行。
少しだけ遅れたことを詫びながら、入るのだが……仁王立ちしたタクマが待っていた。
「悪い悪い、少しばかり遅れた」
「──いや、遅いだろ! こっちの方が時間が速く経つにしたって、何時間も待ったんだけど!?」
「……お前なぁ、家族の団欒の方が友人の悩みよりも優先するなんて当たり前だろ」
「酷ぇ……けど、事実だから否定できない」
自分でも自覚していることなんだから、八つ当たりをしないでもらいたい。
やれやれ、と肩を竦めると苛立ちを隠せないタクマが迫って来る。
「そ・れ・で! 俺はいったい、これからどうすればいいんだ?」
「もちろん、それは用意してある。これからお前を救うアイテムは──これだ」
「……水晶玉か。鑑定で全然情報が分からないのは、そのタネを守るためか?」
「まあな。複製不可、強制解除がされた際には自壊する便利機能付きだ。まずはこれを、店の外に置く──これで終わり」
タクマが優れた解析系のスキルを持っていたとしても、水晶の中身は分からない。
だからこそ、俺がちょっと外に出た間に起きた変化にも気づいていないようだ。
「今頃、周りの奴らは慌てているな」
「具体的に何をしたんだ?」
「ジャミングだ。スキルで直接こっちを把握することはできなくなったし、五感を強化して情報を盗むことも阻止してある。あと、結界の構築もできるから直接乗り込むのも難しいだろう」
「……どんだけ高性能なんだよ」
売り物にならない代物だな、これ。
存在を知られれば、間違いなく悪用されるタイプ……【情報王】の居るここで使うのは危険だが、まあ承知の上で置いたわけだ。
「結界なんか張って、俺の客が入ってこなくなるんじゃないか?」
「まあ、そのままならそうなるな。だから、もう少し客を選べ。あるだろ、そういう選ばれた客しか来ないヤツ──これを使えば、持ち主は入れるようになるからさ」
「水晶の欠片……複製される可能性は?」
「無い、とは言い切れないが限りなく低くはある。少なくとも、贋作は無理だ。まったく同じ波長の物を作っても、無理なように仕込みはしてあるからな」
とりあえずは、これで何とかなるだろう。
ジンリも本気で嫌がらせをしたいわけじゃないので、俺がここに策を与えたという行動そのもので納得するはずだ。
しばらくはなんとかなる。
もし、また何かしてくるなら……そのときはそのときで対処しよう。
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