虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

指摘される改善点 後篇



 俺の世界の迷宮には、ユニーク種が何体も生息している。
 これらは『SEBAS』が生みだし、俺にも内緒でいろんな計画を立てていた。

 それが俺にとって有益なことは間違いないのだが、倫理に触れることはさせたくない。
 そんなわけで、俺はかつて『SEBAS』にあることを提案した。

『お前たちがかつて因子を与え、変異した者たちもいる。彼らに関しては、己の状態を理解しているからこそ外へ向かおうとは考えていないようだがな』

「そりゃあ討伐されたとき、蘇生もできなくなるからな……この星の中ならどうにかなるけど、外部じゃそっちの法則が優先だ。どうにか対策は試しているが、やっぱり完全なモノは難しいだろう」

『──ネームド種やユニーク種に、森の民たちが進化できたこと自体は喜ばしいのだが。やはり、そこだけは嫌いだ』

 俺が【救星者】だからできたこと。
 星から必要なモノを出してもらい、それらを適性のある魔物に与えることで行われる特殊な強化。

 適性があればほぼ間違いなく強くなれるのだが、問題点が一つだけ。
 ネームド種やユニーク種には、その個体由来以外の蘇生能力が通じなくなるのだ。

 前に語ったが、彼らは人族に討伐された際に特典を生成する。
 その際に、蘇生に必要な魂魄の大半を不可逆な形で消費してしまう。

 なので、絶対に死亡判定を出されてはいけなくなる。
 ……なお、この世界なら問題が無いのは、単純にそのシステムをOFFにしたからだ。

 ちなみに魔物に殺された場合は、強化に使われた要素だけが持っていかれる。
 そのため蘇生は通じるので、彼ら同士の模擬戦などは別に止めていない。

「……まあ、彼らに関しては外に行かないことを了承してくれているからいいとしよう。そうじゃない奴らのことだが、蘇生が通じるにしても外は危ないからな」

『……最上位種族、限界突破、職業持ち。おまけに『プログレス』まで使えても、そのようなことを言うのか?』

「まあ、うちの子や嫁さんなら間違いなく勝つな。前に来たとき、挨拶したんだから強さは分かるだろう?」

『確かにアレは、英傑級の強さだったな。素でそれなのに、今では『プログレス』の力まである……なるほど、決して油断できるわけではないのか』

 そこまでは及ばないが、それでも休人の中に強い奴はいる。
 なので、どれだけ強くても万全とは呼べないのが問題だ。

 俺と紐づけして、蘇生できるようにしておけばいいんだが……それを無効化される可能性もあるしやっぱりな。

『……仕方ない。この件に関しては、また別の機会にしよう。だが、お前にはまだまだ問題点があるのだからな』

「まだあるのか……まあいいか、少しでも良くなるために教えてくれ」

 そうして俺は風兎から、改善点を教えてもらう……少しでも良くなって、『生者』の権能が無くとも渡り合えるようになりたいな。


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