虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣談 後篇(02)
『『生者』が生みだしたソレは、神代に存在したとある機械の模造品です。本来の性能であれば、望む限りの力を使用者にもたらしたことでしょう……『プログレス』には、それほどの力は無いようですが』
ドゥーハスト王国に封じられていたのは、とある願いを籠められたその機体だった。
そしてそれはツクルによって回収され、中身を調べ尽くされる。
本来、厳重に封印されたシステムは、創造神の権能によって詳らかになった。
それを劣化させ、誰にでも使えるようにしたのが──『プログレス』である。
「望む力って……具体的には?」
『かつて、同種の機体によって無数の英傑たちが死にました。その者の願いは強者を殺す術、その結果自身よりも強い存在に絶対的な優位を持つ力を得ました』
「……そりゃあつまんねぇな。命懸けで闘うからこそ、闘いは面白いのにな」
『そう考える者もいるように、その逆を考える者もいます。その者は戦いを殺すための手段であり、そこに楽しみなどを覚えなかっただけです……話が逸れましたね。いずれにせよ、本来であれば危険物であり異物です』
それが創造神によって、存在を許された。
そのことが何を意味するのかを、聖翠狼は【獣王】に語る。
『獣神様によると、『プログレス』は成長性に制限が設けられてはいるが、最終的には本来の性能になるとのこと。貴女の持つそれもまた、望んだだけの力をもたらすでしょう』
「……俺のヤツ、俺だけじゃ使いづれぇんだよな。その領域って、いったいどれぐらい時間が掛かんだよ」
『……さすがにそこまでは。個人差があり、計画にはまだ問題があるとのことですが』
「計画? 神様も何か企んでんのか?」
意図して制限が課せられた『プログレス』には、無数の意思が絡んでいる。
そして神々にとってもまた、その緩やかな成長が意味を成していた。
『貴女には、『プログレス』をより発展する手伝いをしてもらいます。手段はどのようなものでも構いませんが、ぜひとも我ら獣人の中からマスター能力と呼ばれるものを発現させてください』
「マスター能力?」
『我らが神が望むものです。いずれそれらの持ち主が一定人数集まったとき、我らにも恩恵があるとのこと』
「……まあ、何でもいいや。とりあえず、俺がやることは『プログレス』を使わせることだな。俺もそのマスター能力? とやらまで強くすれば、ご褒美があるってわけだ」
そうして翌日、【獣王】から国民たちにこれらの情報が伝わる。
より『プログレス』を使うことになり、進化は進んでいくのだった。
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