虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その19



 王様にも加護云々の報告を済ませて、晴れて義務や責任から解放された。
 純粋に祭りを楽しめる……そう思ってから数日、今日がついに最終日だ。

「──さぁ、満員御礼なこの力比べもいよいよ最後となりました! 今日は特別、最近はやりの『プログレス』を持ってきたよ! しかもなんと、普通の物よりも便利な機能が搭載されているときた!」

 俺は『ダメージカウンター』を用いた計測屋として、最後の営業を行う。
 せっかくなので景品は豪華に、通常版よりも機能が優れた『プログレス』を出した。

 俺も愛用する鑑定のレベル差判定や、擬似的な死亡レーダーも入れてある。
 ちなみにそれらも、ちゃんと有料コンテンツとして販売してあります。

「どんな手段で構いません! 魔道具でも錬金アイテムでも集団で力を注いでも! 見事最高記録を出した方、もしくは団体にこちらの『プログレス』が贈呈されます!」

 これまでの計測でいろいろと情報は集めてあるので、特殊な状況も今回は測定する。
 測定は一人でやらせていたからこそ、補助系の能力の相乗効果も知りたくなったし。

「──というわけで、あとは頼みます」

「畏まりました」

 サポートドールに店を任せて、この場を後にする。
 これまでもそうだったので、そちらの方が親しみを持ってもらえるだろう。

 そして、俺自身は同じく最終日ということで奮発している出店を見ていく。
 在庫を残している店は、大幅に安くしてどうにか売ろうとしている。

 俺はそういった店に向かうと、他の客に迷惑にならない程度に大量買いしていく。
 店主と相談し、赤字分だけ少しお安めに買わせてもらっていた。

「──あの、本当によろしいのですか?」

「持ちつ持たれつ。そうですね、それを元手により良い物を作られてはいかがですか? 謙虚過ぎるのも、少々問題かと」

「……分かりました。では、お売りします。この恩は決して忘れません」

「取引の結果ですので。これを忘れてしまうほど、素晴らしい結果を貴方が出すことをお祈りしています」

 そう告げて、俺はまた別の店で同じようなことを繰り返す。
 ……何度も繰り返しているうえ、そもそも数日前から散財している。

 知らない人から見れば美談になる可能性もあるが、すでに似たような経験をしている店主などは──

「おうっ、また来ると思ってたぜ! 少し根は張るが……これなんてどうだ?」

「これは……いったいどこで?」

「休人のヤツから買い叩いたんだが、さっぱり売れなくてな。けど、お前さんなら何か想うところでもできてくれねぇかなって」

「……上出来です。これも頂きましょう」

 なんてノリでジョークグッズを買い漁り、ひたすら浪費していく。
 そうして祭りを満喫し、閉会式を迎えるのだった。


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