虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その15



 死神の鎌を冠した『プログレス』。
 その力を宿した[アライバー]の振るう一撃は、[スノウエスト]の核に命中した。

 かつては無かったかもしれない弱点。
 それは模倣品であるがゆえに生まれたもので、狙われることは想定していなかったのかもしれない。

 なんせ神のエネルギーなのだから、ほぼすべてのエネルギーを超越している。
 そのため、攻撃が届かないこともある……が、『プログレス』の攻撃は通じるのだ。

 製作過程で神様を頼ったからか、そもそも俺の:DIY:が創造神様由来の力だからか。
 いずれにせよ、『プログレス』にも神の力が宿っている……あとは使い方だ。

「──『デッドタナトス』の本質は、魂の蒐集。そこに神の力は必須、そのため微弱ながら宿しているのですよ……神気を」

 核が抵抗の際に放出する神気による障壁。
 それを鎌はゆっくりと推し進め、そのまま破壊──容赦なく核を刺し貫いた。

 そして、鎌の能力である“ソウルハント”による魂の収穫が行われる。
 模造品の魂ではあるが、回収されたことで不完全になり──停止した。

「いかがでしょうか。これが私にできる全力であり、これ以上ない結果だと思いますが」

『……ええ、お見事です。獣神様も賞賛だと仰っております。現時点を以って、試練は終了となります』

 聖獣様がそう告げると、雪や荒れ果てた環境が一瞬でリセットされる。
 そして、そのうえで再び変遷──周囲は緑溢れる自然になっていた。

『試練は果たされました。約定に基づき、私は貴方様に恩恵を授けます。私の加護を、どうかお受け取り下さい』

 そう言って、聖獣様──『聖翠狼』は俺に体内から取り出した力を届ける。
 ふわふわと飛んできたそれを、俺は受け入れて──加護が新たに追加された。

『私の加護はこの森の守護獣から得られる恩恵の効果を高めます。それゆえに、加護を持つ者にのみ資格を与えているのです』

「……他の聖獣様も、そういった効果を?」

『どうでしょうか。知り得る限り、同一の能力というものは聞いたことがありません。私のように、非戦闘タイプの守護獣にはこのような力があるとのことですが』

「いえ、そうでしたか。参考になる情報、ありがとうございます」

 これまで得た加護がすべて強化されると言うのは、俺としても非常に助かる。
 一段階分だけらしいが、それでも役に立つ加護の性能が上がるので。

『では、貴方様を元の場所に戻します。盛大な宴で祝福いたします』

「ははっ、ではご厚意に甘えましょうか」

 そうして俺は、この場を離れることに。
 ……やっぱり獣人だけでなく、聖獣様も祭りが好きなんだな。


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