虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その13

 アイテムのごり押しで、じわじわと削いできた[スノウエスト]の余裕。
 自我の薄い精霊種でも、自分が少しずつ追い込まれているのは分かったのだろう。

 現在、生命力への置換に用いていた雪を攻撃に使って、俺を追い出そうとしている。
 対する俺は、搭乗した[アライバー]に死の因果を纏わせ、猛攻を振るっていた。

 機体の各パーツごとに『プログレス』を組み込む荒業で、複数の補正を受けている。
 全体に『バトルラーニング』も発動しているので、反撃も抵抗もすべて捌いていた。

「──雪は減っています。やがて、尽きればこの戦いも終わるでしょう」

 紫の炎と黒い霧が増殖を防いでいる以上、雪を増やすことはできない。
 それゆえに雪を固め、俺を殺すことを選んでいたのだから。

 その抵抗も“オートカウンター”の力で、無効化されたうえで倍返しを受けている。
 初期のルールである結界を破壊したうえでの攻撃も、機体を突破しないと通じない。

『──ええ、その通りです』

 存在感を薄くして潜んでいた聖獣様が、ようやく声を出した。
 それは俺の語った通り、この試練が結末に近づいているからだろう。

『獣神様も、この結果はご存じだったようです。そして、プログレスをお使いになることも……他の力を使い、補うことも』

 権能は封じられた俺にできることは、何でもしているつもりだ。
 そもそも、素の能力値が低すぎる俺が俺のままで戦えることは無い。

 だからこそ、権能を用いて用意したアイテムもかなり乱用した。
 特に、グレーな『プログレス』も複数個を同時に起動したが……不味かったな。

『行いそのものに異論などございません。最後に勝つことこそが、野生の理。ですが、相手が行っていることを、己に組み込んではいけないということもございません』

「……ははっ、そうですね」

『ええ、ご理解いただけたようで。そして、これが──最終試練となります』

「っ……これはこれは。なんとも、ずいぶんと異形なお姿になりましたね」

 変化は唐突に。
 小さな雪の精霊だったそれは、その身を雪の中に沈めた。

 それだけなら逃げた、隠れたといった考えはすぐに霧散する。
 精霊……いや精霊だったナニカは、すでに目に見える形で動いていた。

『──『侵雪界獣[スノウエスト]』、神が新たに定めた名称です。これ以降、干渉は行われません。頑張ってくださいね』

「……あはは、そうさせてもらいます」

 超強化されて復活した[スノウエスト]。
 まずはその能力を調べて、勝てるかどうか考えてもらわないと。


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