虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その12



 無尽蔵に溢れる生命力の対策は、紫の炎と黒い霧によって成された。
 災凶種たる雪の精霊スノウエストを相手に、挑み行くは鋼鉄の巨人アライバー

 降り注ぐ雪はすぐに燃えて霧に呑み込まれていく中、俺は操縦幹を前に押し倒す。
 それに応じて勢いは増し、加速した機体はすぐに[スノウエスト]の足元へ到達する。

「──『レッグセット:スピードスター』」

 改良に改良を加え、[アライバー]にはある機構を仕込んであった。
 それは腕部や脚部、胴部などの各パーツごとに『プログレス』を仕込む装置だ。

 そして、脚部にセットした『プログレス』が発動する。
 速度補正の『プログレス』によって、さらに機体が超高速で突っ込んでいく。

「──『アームセット:サウザンドエッジ』と『ボディセット:メタルスケルトン』」

 腕を振るえば刃が飛び出し、その身はより鋼鉄味の強い頑丈な骨格に覆われる。
 宙に漂う[スノウエスト]に飛び上がり、その刃を振るう。

「──“セットウェポン:天威の滅光”」

 突如、その刃が眩い光を帯びる。
 触れた対象を塵も残さず消し去る、そんな光を『サウザンドエッジ』越しに発動させて[スノウエスト]にぶつけた。

『っ……!』

「イイ反応です。そして、これで終わりとしましょうか──『メインセット:バトルラーニング』」

 機体全体に効果を発揮できる、メイン部分へのインストール。
 先ほどの攻撃が効いていたので、畳みかけるように仕込んでみた。

 神殺しすらも成し得た戦闘プログラムが、機体に反映される。
 俺の稚拙な動きは瞬時に改善され、刃はよりいっそう精霊を刻んでいく。

 ついに反応を示した[スノウエスト]。
 これまで効果的な攻撃が出来なかったが、光の熱が良かったのかもしれない……そういえば雪が降ると、陽光は隠れていたしな。

「くっ、そう来ますか……!」

『────!!』

 まともな攻撃を受けて、模造品でもそれなりの反応を示した。
 雪が蠢き、鋭い棘のようになってこちらを襲い始める。

「遅い──“オートカウンター”」

 そのすべてを、勝手に動く機体が捌く。
 脚部は加速して棘を躱し、間に合わなくなれば進路を腕部で強引に確保。

 反撃を組み込んだプログラムによって、光熱の刃が抵抗してもなお精霊に喰らい付く。
 変換が上手くいかず、置換もできない……じわじわと追い詰められる。

「……普通なら、間に合わずに死んでいるでしょうね。この生成速度、災凶種であるのも納得です」

 攻撃が速度も規模も尋常ではなく、いつの間にか大きさも氷塊レベルになっていた。
 優れた剣士の動きを模倣し、一発で断ち切れる技術が無かったら……どうなってたか。

 おまけにその雪が固まった氷も、触れたら即死の吸収性を持っているわけだし。
 ……これで模造品なんだから、本体ってどれだけヤバかったんだか。


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