虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭終篇 その10
相手が星を侵す厄災なのであれば、対抗するのは星が定めた救い手であるべきだろう。
……まあある意味だと、俺もまた異なる世界で【救星者】認定されているけども。
継承されてきた『騎士王』が担うのは、星が真に危険に瀕した際の裁定。
それが必要であれば、その『超越者』すらも超越した権能を全開で振るうことになる。
「握るは聖鑓、放つは魔術。最強の騎士、その紛い物──推して参る!」
発動している魔術は“千変宝珠”。
こちらもシステム的に発動可能となり、多少ながら使いやすくなっている。
自由度が高すぎるからこそ、それをどうにかしようと考えていた。
その方法の一つとして挙げていたことがあるが……ちょうどいいし、試してみよう。
今の俺は『騎士王』の権能を借りている。
その一つに存在する、ありとあらゆるものに対する適性がその行動も成功に導いてくれるだろうし。
「──“千変宝珠・炎槍ノ乙女”」
告げた名は、ヴァルハラ世界に住まう戦乙女の誰かの名前。
彼女の名を冠したそれは、同じくその世界に住まう戦乙女アインヒルドが刻んだ魔術。
俺の“千変宝珠”を基に、彼女が経験から派生させたであろうそれは、彼女もまた有している万能性を発展させるための物。
事前に確認した情報によると、限りなく模倣対象にした相手の戦闘スタイルを再現できるよう、“千変宝珠”にプログラムを加えているようだ。
俺の握り締めていた聖鑓、そちらに宝珠の一部が張り付いて──発火する。
槍の影響を受けて聖炎となったそれを鑓先に宿しながら、俺の体は前へ進み出た。
「──“疾風突”」
ついでに武技を発動して、その移動速度を上げる。
目的地は空に漂う[スノウエスト]、何もしてこないのは傲りか自信か。
「重ねて──“五月雨突”」
聖なる炎を燈した鑓は、風の勢いのままに雨が如き連続突きを放つ。
万能の権能を持つ『騎士王』は、武技でも何でも合わせた戦い方ができる。
……見せてもらうために一苦労したが、解析した記録は『SEBAS』が保存した。
それらは結界を動かす際に利用され、こうして俺の糧となっている。
「っ……何ら変わらない、ようですね」
紛い物ではやはりダメだったようで、鑓での攻撃はすべて無効化されていた。
体にたしかに刺さっている、そのはずなのに平然としているのだ。
どうすればいいのか……そう考えていたそのとき、助言が入る。
《旦那様、能力の一つが判明した。間違いありません、置換能力がございます》
「チカン……痴漢、じゃなくて置換か。つまり…………マジか!?」
《雪が存在する限り、[スノウエスト]が滅ぶことはございません。また、周囲の物質や魔力を雪に変換する能力もございます。双方に策を置かねば、攻略は難しいかと》
「雪があれば死なない能力と、無限に雪を増やす能力ですか……ふぅ、もう一工夫しないと勝てませんね」
いったい、本来はどれだけの数が倒すために必要なんだろうか。
それを覆すための戦い……縛りがあろうとも、勝てることを証明しなければ。
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