虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その09



 そもそも、『死天』謹製のアイテムを受けて死んでいないのがおかしい。
 アレは死の因果をアイテム化した代物、要は即死のチートアイテムのようなものだ。

 劣化させた『喰獣の剣』のように、意図してその性能を弱体化させたならともかく、先ほど使った『火竜の呑柱』は純正品かつ仙丹で強化した代物。

 だというのに、[スノウエスト]は吸収までしてきた。
 システム的に吸収は無効化の上位、属性の相性とかそんなレベルの話じゃない。

「──となると、災凶種ディザスターとしての能力に何か鍵があるのかもしれませんね」

 魔物の頂点は二種類存在する。
 その片側である『災凶種』には、共通してある能力が備わっているらしい。

 名称は『星害厄災』。
 どんな存在が相対していようと、自分の発動する能力を絶対に発動させることができる領域を展開できるというチートだ。

 もし[スノウエスト]が即死能力を持っていたら、その領域内ではどれだけ耐性があろうと必ず即死する……幸いそれは無かったものの、代わりに『侵雪』が存在する。

 模造品だからか結界で防げているが、それでも触れれば間違いなく効果が発動する。
 他者を蝕む雪の効果は、俺を永続的に殺すこともできるだろう。

「こうなれば──“精辰星意”!」

 領域の構築を相手がするのであれば、こちらもまたそれをするだけ。
 自身の領域内で敵対する相手を弱体化させる、そんな俺にピッタリな能力を発動する。

「……どう、ですかね?」

《減少そのものは発動しているようです。しかしながら、[スノウエスト]の最大レベルもまた限界を超えているため、差がまったく縮まりません》

「…………あー、うん」

 せっかくのデバフ領域は、俺と相手とのレベル差によって効果が発揮できる。
 俺のレベルが999、つまり世界最高の数値だからこそその差も大きかった。

 しかし、災凶種はその数値に至らずとも、一度目の限界である250を超えている。
 そのうえで、暴れまくったらしいのでレベルはお高め──約800とのことだ。

 それでも100ずつ減らせる……が、俺よりも遥かに高い能力値を持つのが災凶種。
 全然減らないのだ……そしておそらく、減らしても戦闘には全然意味がない。

 厄介で殺せない理由は能力値ではなく、発動している能力の方。
 今、『SEBAS』が調べてくれている情報が、その仕組みを暴くはず。

「だからこそ、少しでも多くサンプルを集めるのが私の仕事です──『騎士王』!」

 再現するのはこの世界最強の人族。
 天才という枠では収まらない、万能さを有する『超越者』。

 彼女の力ならば、成し得ることができるかもしれない──単独での災凶殺しも。


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