虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭終篇 その06
「切り替えです──『剣矢』」
瞬時に[インベントリ]から弓と矢(剣)のセットを取りだし、番えては発射する。
曲芸のような動きで放つ射撃、しかしその狙いは的確で複数体の魔物を貫いていく。
なお、その剣は剣であってそうではない。
名は『喰獣の剣』、かつて牙による死の因果を改悪して生みだした一品。
触れただけですべての獣を食い殺す、そんな性質を持っていた牙である。
それは劣化し、剣の形になることで……ギリギリ獣が死なない程度に収まった。
まあ、それも矢として射ってしまえば普通に殺せてしまうのだけれど。
矢にするのには剣である必要があるため、ちょうど良かったから射っているだけだ。
「重ねて──【刀王】」
弓を仕舞い、矢にしていた剣を握る。
再現するのは、刀の蒐集家である男。
本来は刀専用の動きなのだが、剣でもできないわけではない。
それに、『喰獣の剣』はただの剣ではないので、多少は応用が利く。
魔力を籠めることで、犬歯が伸びるように反り立つ──そう、刀のように。
「武技が無い方が強い再現は、滅多にありませんよね!」
魔物たちに向かって俺も突撃する。
その近くを通るたび、腕が振るわれ──魔物たちが斬られていく。
ついでに俺もその高速抜刀に耐えられないで死ぬが、今回のルールには反しない。
これまでの攻撃と違い、抜刀術はその抜刀ごとに死亡数がリセットされる。
これまでは10体ずつだった死亡数も、ある意味この移動でどんどん減っていく。
武技をいっさい用いず、己の技量のみで行われる抜刀術。
特に巧いのは首を狩る居合。
どんな体勢からでも、剣は魔物の首を切り落としている。
「職業も使いきましょう──“姿構五行”、“武魔一体”」
刀を持つ際の姿勢を良くできる能力、そして魔力操作と武術戦闘の両立に補正が入る能力を起動してみる。
俺自身にその変化は分からないが、なんとなく抜刀の速度が速くなった気がした。
動きの再現には魔力を用いているし、補正の効果はそれに用いる結界にも対応する。
その結果、さらに速度が上がる。
魔物は数が減るほど強化されるはずだが、それを物ともせずに、どんどん首を飛ばしていく再現の抜刀術。
『──驚きですね。これほどまでに、圧倒的な闘いになるとは』
「これが、私がこの世界で学んだものです」
『……そのようですね。そして、それゆえの選択なのでしょう──獣神様のご意思のままに、試練は次の段階へ向かいます』
なんとも嫌な予感のする聖獣様のお言葉。
何が起こるのか……うん、魔物が立ちはだかるその奥で、ナニカが胎動しているな。
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