虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その04


 聖獣様の試練ということで、念入りな準備が必要となる。
 これまでの集大成、というわけでもないが強制的な縛りなので少しやる気が出てきた。

 ……昔のランダムプレイは、そうして本来できることができなかったもんな。
 今のように、ほぼ何でもできるようなゲームの方が少なかったし。

《縛りに規定されているのは、あくまで創造の能力である:DIY:の行使、そして生死に関する『生者』の権能行使です。つまり、それ以外の能力に関しては使用できます》

「つまり……セットすること、そしてそれ以外の能力なら使えるわけだ」

 ここは決して外せない部分だ。
 たとえば:DIY:ならどんな生産でもできる能力が、そして『生者』なら生と死に関する全[称号]を内包する受動能力パッシブがある。

 何より『生者』は、保有する称号の中から五つを追加でセットできるようになるのだ。
 これによって、より多くの戦略を組むことができるからな。

「ここは『SEBAS』に任せるとして、お次は職業だな。職業スキルしか使えないが、補正は無いより有った方がいいからな。そういえば、結構解放できた数も増えたか?」

《【救星者】“職業強化”によるスキル定着は、生産職と見習い職、そして【試験職】に限られております》

「おおっ、解放できたのか……とりあえず何でも使えるようになったわけだな」

《擬似的に行使していた『騎士王』の魔術、仙人の仙術、そして北欧世界のルーン術などもシステム経由で行使可能です》

 俺が就く【救星者】もまた、五つ分の職業の恩恵にあやかることができる能力を持つ。
 就職による能力値補正は無くとも、職業スキル自体が便利なので大して困らない。

 そして、最近得た職業【試験職】。
 運営が用意した特殊な職業で、いっさい成長しない代わりにあらゆるスキルや武技・魔技などに補正(使用許可)が入る。

 それを同じく【救星者】の能力で強化し、スキルをセットせずとも使えるようにした。
 要するに、俺はシステム的に習得していないものでもシステム経由で使えるのだ。

《この大森林での縛りが、旦那様に負担を掛けることで取得経験値量を増やしました。それによって、解放が成されました》

「これで枠が一つ空いたわけだ。まあ、何を入れるかは『SEBAS』に委ねる。いちおうの確認はしてほしいが、ピンチになったら自己判断でやってくれて構わない」

《畏まりました。旦那様、今回私は指示された通りに動きます。可能な限り、ご自身の判断を選んでいただきたいのですが……いかがでしょうか?》

「……うーん、大まかな指示は言う。だからその詳細だけは任せてもいいか? 正直、全部の把握はしていないからな」

 さすがに全部をやるのは早いと思ってくれたようで、そこは了承してくれた。
 聖獣様の準備もそろそろ終わる……アイテムの方を吟味して、終わりかな?


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