虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その03


 これまで同様、加護を貰うためには試練が必要だった。
 聖獣様から賜るためには、相応の難易度の試練になるだろうと予測している。

『──死神様の神練で覚悟を。獣神様の神練で力を。医療神様の神練で知恵を。そして、創造神様の神練である現状を、貴方様は乗り越えております』

「…………」

『そのため、貴方様にどのような試練を課そうと必ず乗り越えるでしょう。不可能を可能にする、そんな権能を持つ貴方様であれば』

「……そう、かもしれませんね」

 言われた通り、俺はいろんなことを権能で乗り越えてきた。
 特に創造と生死の超越は、この虚弱な体には必要不可欠と言っても過言ではない。

『それゆえに、獣神様から託宣はこうです。再演せよ、たとえ牙を無くそうとも』

「……具体的に、私は何を?」

『この空間に無数の魔物を解き放ちます。貴方様はそれを、いっさい魔物からの攻撃を受けることなく討伐してください』

 ここで直接的に死なないように、とか被爆数0でと言わないのは、俺が虚弱なことを理解してのことなのだろう。

 だからこそ、魔物が俺の結界を突破するという前提で話をしている。

『魔物の爪と牙は、貴方様の結界を破るための祝福が獣神様より与えられます。数度触れれば、まるで鎧を割くように引き裂きます』

「なかなか本格的ですね」

『貴方様はそれを、いっさい権能に頼ることなく突破してください。それが獣神様が託宣してくださった試練となります』

「……いくつか確認しても?」

 割と厳しい話ではあるが、ちゃんと確認しておけばできるという自信があった。
 聖獣様も俺の問いに答えてくれるようで、コクリと首を縦に振った。

「使用制限が設けられる権能ですが、それは創造神様と死神様のモノに限られる、ということでよろしいでしょうか? たとえば、星渡りの民である休人に与えられた、[称号]による権能など」

『そちらに関する制限はございません。明言しますが、制限されるのはこの場で生産や創造を行うこと、そして死する状態から生還することのみです。それ以外の貴方様が手に入れた権能に関しては制限を課しません』

「……ありがとうございます。そのような条件であれば、私にも活路がございます」

『そうですか。では、すぐに準備を整えていきましょう。時間が掛かりますので、その間に貴方様も準備の方をお願いいたします』

「ええ、ではそのように」

 もちろん、そう簡単な話ではないが。
 決してできないわけではない──試練を乗り越えて、加護を得ようじゃないか。


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