虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭後篇 その20



 まあ、それから夕刻までずっと続いた幼い森獣への挑戦。
 何人も勝利者が出てもなお、諦めることなく続いていった。

 最初は模擬戦だったのだが、途中から何でもありな感じになっていた。
 要は幼い森獣を認めさせればOKといった感じで、いろんなことが行われる。 

 それを経て、戦い以外に何かを学ぶことがあったようで……許可を奮発していた。
 幼き森獣にとっての強さの意味は、今日から変化していくだろう。

『──これ、お礼』

「許可、そして……加護ですね。本当に、よろしいのでしょうか?」

『うん、今回のことが無かったら、僕は分からなかったもん。僕には僕の、強くなるためにできることがあるんだって。だから、そのお礼。僕の加護は、隠れることしかできないけど……それでも、嬉しい?』

「いえ、嬉しいどころじゃありません……最高の加護ですよ」

 調べてみると、単純な隠蔽に一定確率で亜空に潜り込める効果が付与されていた。
 とはいえ、だいぶ劣化しており、どちらかと言えば三次元透過というすりぬける感じだ。

 それでも成功すれば、今回の捜索と同じぐらいの技術が無ければ見つけられなくなる。
 ……まあ、スキルの隠蔽にしか付与できないので、俺の場合は魔道具必須だけど。

『これで……会えるんだっけ?』

「そう、ですね。皆さんのお陰で、ここまで来ました。明日、聖獣様に謁見の申し込みをする予定です」

『うん。聖獣様は僕にも優しくしてくれるいいお方なんだよ。だから、『生者』さんにも優しいと思うよ』

「それは……そう、信じたいですね」

 やらかしたこととか、いろいろとあるからな……対『侵略者』戦で暴れまくったし。
 なのでそこに関しては、さほど期待しないでおこう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「とりあえず、やり切ったな……」

《お疲れ様です、旦那様》

「そうだな。なんだかんだ、加護も無事コンプリート。獣神様の加護の効果で効果は増幅だし、スキルが無くても意外とやっていけると改めて感じられたよ」

 まあ、:DIY:や職業スキルに頼っている感がたっぷりだが、『プログレス』に頼り切りではないと思えた。

 多種多様であるからこそ、依存してしまうほどに魅力的な力──『プログレス』。
 本来であれば一つなのに、大量に使える権利があると……堕落してしまうわけだ。

 それを今回、いろんなパターンで縛りを設けてなお、目的を達成できた。
 この経験は、改めて自身を見つめ直すいい機会になったな。

「──まあ、明日は聖獣が相手だ。徹底したサポートをお願いしたい」

《お任せください》

 なんて会話をしたのち、[ログアウト]を選びこの世界から一時的に消えるのだった。


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