虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭後篇 その12

連続更新です(07/12)
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 あのとき、『告鳥ワーンバード』が何をしようとしたのか……軽い攻撃である。
 名の通り声が良く響く種族なので、それを活かした攻撃──音響爆弾だ。

 あれが聞こえた範囲はアウト圏内で、喰らえばアウトという寸法である。
 なのでどうにか逃げ切り、その先にあったゴール地点へ飛び込んだ。

「ぷはぁ! ……ふぅ、どうだ?」

『──やるじゃないか、普人……いや、休人よ。よくぞ私の試験を超えた!』

 空から舞い降りてきたのは、小鳥だった。
 おそらく、参加者がまだいるのであくまで分体を遣わしたのだろう。

「ありがとうございます。あの、ところでですが、その違いが分かるのですか?」

『ん? ああ、聴けば分かるとも』

 聴く、つまり音に関する何かで調べられたわけだ。
 もし視られていれば、普段の設定的に死んでいたが……音は想定外だった。

[組み込んでおきましょう]

《頼んだ》

 警戒してか、骨伝導ではなくUI経由で俺にメッセージを送る『SEBAS』。
 普段はそちらだが、聴覚系で秀でた能力がある相手に油断するわけにはいかない。

「そうでしたか。それで、この区画での試練についてですが……」

『そうだったな。まさか、あそこまで妨害に優れたアイテムを持っているとは。お陰で乗じようとした他の参加者も、分体で捕えなければならなくなった』

「これもまた、立派な作戦ですので」

『それにやられた私が悪い。あれも立派な作戦の一つ、つまり文句なしのクリアだ』

 ケチ……というか正当な異議を申し立てられる可能性もあったが、どうやら心の広い森獣だったようだ。

『では、まずは許可。そして加護を与えようか──受け取れ』

 二枚の羽が降って来る。
 スッと体内に取り込まれると、それらはステータスに反映された。

「ありがとうございます」

『加護の効果は索敵範囲の拡大、および隠形の看破成功率向上。あとは、それを知らせる際の強化幅が上がるぞ』

「なんと、そのような効果が。たしかに、これだけの効果であれば、あのように難しい試練であっても致し方ありませんね」

『ふっ、分かるか? 現に、まだ加護を受け取れたものは指の数もおらん』

 鳥の足なので、数は両足を入れても六……本当に限られているな。
 だがまあ、有用過ぎる効果なのは事実、それは『SEBAS』も認めている。

『ふむ……残る許可はあと二つか。聖獣様に会うべく、励むがよい』

「ありがとうございます、必ずやその期待に応えるべく精進いたします」

 中央はあとにするとして、問題の緑鹿が待つ南の区画。
 覚悟を決める時が来たのだ……さぁ、行こうじゃないか。


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