虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭後篇 その08

連続更新です(03/12)
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 生産は理論上どこでも行える。
 そりゃあそうだ、究極的に言えばどんなことでもやりたいと思った時がやれるときだ。

 まあ、そんな精神的な話ではなく、実際には生産が行えるのは非戦闘地帯のみ。
 縛りがシステムによって設けられているため、システム頼りの生産だとそうなるのだ。

 そのため、いくつかの手段を用いてその制限を外せればどこでも生産が可能となる。
 わざわざ持ち帰って生産するより、素材の自然さを保てるなどの利点もあるが……。

《それ以上に、周囲に気を使う分丁寧な作業ができないヤツが多いけどな。だから、品質はどっこいどっこい……いや、新鮮さを保てばどうとでもなる以上、普通にやった方が品質はあっちの方が上か》

 利点と言えば──その場で作ればすぐに使えること、持ち込み制限のあるアイテムを擬似的に多く持っていける点などだ。

 蘇生薬などのアイテムも、普通は数に制限があるのでかなり貴重と言えよう。
 ……俺の蘇生ポーションは、希釈しているだけで普通の物なので無制限だけどな。

《まあ、ちゃんとどこでも一定の生産ができるなら、早く作れる方がいいみたいだが》

 一つ分だけ、[称号]を生産系の物に入れ替えてある。
 これなら『生者』が無ければ、やっていたということで……ギリギリセーフだ。

 セットしたのは『巧天』、休人だけが持つことを許された特殊な称号。
 効果は生産したアイテムの強化、使用時の効果延長、そして発動者の成長補正。

 一段階アイテムの性能を上げてくれるうえに、その効果まで引き延ばしてくれるのだ。
 ……すでに成長補正は意味が無いが、今までお世話になったということで。

「もう一つの生産強化のためにも、:DIY:無しで生産をしているが……うん、しっかりとできているな」

 初期から授かっているチート生産スキルである:DIY:は、ありとあらゆる生産の概念が内包された神様の権能の一部……らしい。

 詳細は『SEBAS』が知っていたが、本人というか本神から聞いてはいないからな。
 まあ、そんなスキルなので、当然のように戦闘地域での生産も可能としている。

 普段ならそのスキルを起動して、楽々生産しているだろうが……一つだけセットした職業【生産勇者】の職業能力を使うなら、使用してはいけないという縛りができてしまう。

 なのでパッシブで発動するどこでも生産解禁だけは使い、生産そのものはすべてマニュアルでやっていた。

《鑑定で見つけた多少の隠蔽効果が付与できる薬草を、加工して液体にする……ただそれだけなのに、二つの強化効果で尋常じゃないほどに高性能の隠蔽ポーションになる》

 磨り潰し、抽出し、水と混ぜただけ。
 質を求めた時間の掛かる生産だと、さすがにバレてしまうからな。

 生産魔法というものもあるらしいが、俺には使えないし……。
 うん、そのうち探してみるのもいいかもしれないな。


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