虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭後篇 その06

月末恒例の連続更新です(01/12)
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 北の森獣から許可を貰い、次に訪れたのは南西の区画。
 そこはとても静かで、ひっそりとして──

『Pyaaaaaaa!』

「……うん、一瞬だったな。まあ、これも事前情報通りか」

 静寂はけたたましい声によって終わる。
 上空で羽ばたく鳥が、この区画全体に響くような声を出したからだ。

「面倒だからここには来ない気でいたが……こうなったら仕方ないか」

 南西の区画は、いっさい戦闘行為をせずとも許可を得ることができる。
 ただし、そのためにはある程度上手に隠す必要があった──そう、気配を。

「祭りのイベントの時も、こんな感じで隠れたりしてたなー。まあ、前回と違ってのんびりしているだけじゃいけないみたいだが」

 ここの森獣は外敵を速やかに察知することに長けており、参加者への課題もその能力を生かしたものとなっている。

 すなわち、自分にどれだけ気づかれないで行動できるかどうか。
 森の中を巡り、気づかれることなく周り終えたらクリアといった形だ。

 見つかった回数が一定以下なら、許可を貰うことができる。
 加護が欲しいなら、より難易度も高くいっさい見つからないことが条件らしい。

「そして……あれが森獣か。やっぱり、獣ではないんだよな」

 先ほどの声の主、それが森獣である。
 種族名は『告鳥ワーンバード』、先触れを告げるのに相応しい鳥だった。

 ……ちなみに、『侵略者』の時は外側からではなく内側からだったからな。
 もし外部から来ていたならば、彼の声で森獣たちも万全の態勢で迎撃できただろう。

「さて、時間もアレだし。さっさと行って、加護も貰っちゃいますか」

 取りだすのは、光学迷彩装置と魔力を籠めることで姿を消すことができる外套。
 そして、どんな強烈な臭いでも消すことができる『消臭利器』。

 普段なら外套に『インビジブルクローク』の能力を組み込んでいたが、今回は無し。
 便利なモノを使っていたため、今の状態ではまだ見つかってしまう可能性が高い。

「魔術も……まあ、有りにしておこうかな。起動──『孤絶ノ衣ウツロナルマトイ』」

 存在を周囲から遮断できる魔術を使い、より気配を隠す。
 これで視覚、嗅覚、魔力による索敵は封じただろう。

「聴覚は結界を足元に展開すればクリア。味覚と触覚は……気にするしかないな。何か問題があったら、すぐに教えてくれ」

《畏まりました》

 少なくとも森獣は上空から監視するタイプなので、触れられる可能性は低いだろう。
 なのでこれでひとまずはOKにして……あとは『SEBAS』に気にかけてもらった。

 それ以外に何かあるなら、それはもう実地で考えた方がいい。
 そう決めて、俺は巡るべきコースへと足を踏み出した。


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