虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

聖獣祭中篇 その17



 どうやら予想は正しかったようで、対蛇獣人のアルゴリズムを組み込んだ反撃は上手くいっている。

 まだ『バトルラーニング』は不完全。
 純粋な対人戦闘であれば武神の域にまで達するであろうが、そんな機会よりは何でもありで戦うことの方が多いからな。

「まだ、このまま続けるのですか?」

「まだだ。そもそもこれ、これ以外の運用はまだ考えていないんだよ。あと、寒い」

「……その赤い絵の具の近くが温かいですので、良ければぜひそちらへ」

「ああ、もう何度か使ってる」

 蛇獣人には蛇と同じくピット機関が備わっているおり、【獣王】はあらゆる獣人の性質が使えるため利用していた。

 今は『ビーストオーブ』で、『覇獸』から借りた雪の狼の力を借りている。
 だからこそ必要としていたのだろうが……うん、もう限界だったみたいだ。

 もしこれをやっていたのが『覇獸』なら、能力以外も再現していただろう。
 つまり耐寒性能も再現することで、吹雪の中でも平然としていたはずだ。

 だが、『ビーストオーブ』で借りられるのは獣の性質に限定されている。
 器官やら能力そのものは受け継げても、それ以外は……現状のようになるのだ。

 現在、【獣王】の居場所は赤い絵の具の近くに感じられている。
 結構長期戦になっているので、だんだんと寒さにやられ始めていたのだろう。

「あのー、そろそろ終わりにしませんか?」

「……そうすっかな? なら、最後に一撃を出し合おうぜ」

「そういうことでしたら」

 彼女が拳を構え、そこに気功のようなエネルギーが集まっていく。
 俺は俺で、魔力を結界に注いでその強度を高める。

 互いに武技は使っていないので、強制退場になるほどのダメージにはならないだろう。
 そんなことを思いながら、向けられた拳に反撃を振るった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 ちなみにぶつけあった結果、【獣王】も俺も吹っ飛んだ。
 彼女は体ごと、俺は頭だけ……なんだか周りで悲鳴が上がった気がする。

 そんなこんなで戦いは終わり、俺もようやくこの時間から解放された。
 それを告げる存在が、森の奥の方から突然現れる。

『終わりか。いい戦いだったな』

「ありがとうございます。貴方様が、この区画の森獣様でしょうか?」

『そうだ。まあ、そんなことはいいだろう。君たちの熱い闘志は、たしかに観ていた。今はとても気分がいい──この場にいるモノたちに許可を与えてやろう!』

 この区画の主──ゴリラ系の森獣は、ドラミングを突然始めた。
 すると俺も含めて周りの者たちが許可を受け取ったエフェクトに包まれる。

『また、闘士たちにも加護を。より激しい闘いを期待しているぞ』

 強く胸をドンッと叩くと、闘っていた者たちが更なる光に包まれた。
 俺もそれを受け取れた……ふぅ、これで五つ集まりましたよ。


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