虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭中篇 その13



 お次に移動したのは西。
 ここでは戦闘自体は可能だが、特定の環境下でしか行えない。

「派手じゃないが、充分に盛り上がるな。人族みたいに場所にこだわりは無いが、それ以上に数を同時にやっているのか」

 西の区画は木々が減り、中央に何もない平地が広がっている。
 そこで獣人たちが模擬戦を行い、それを観る者たちが盛り上がっていた。

 ここでも聖獣様の力が働くので、オーバーキルを心配する必要は無くなる。
 そのため彼らは全身全霊、全力を振るって相手と戦っていた。

「ここでは戦闘参加回数で許可、勝利回数で加護が貰える……って情報だったな。となると、参加せざるを得ないわけだ」

 前回に引き続き、『バトルラーニング』は起動中。
 反撃可能なモード“オートカウンター”も使い、戦うつもりなのでほぼ勝ち確定だ。

 獣人たちはあまり魔力運用に長けてはいないので、魔法などには備えなくていい。
 戦闘学習で近接戦闘にはほぼ無敵だが、まだ魔力関係はデータが欠けているからな。

 それを補うために、祭りで俺は彼らの戦闘能力を出店で測っていた。
 サンドバックを叩く前、その体の動きから行われるすべてを把握するためにな。

 中には魔力を使って攻撃する者もいたし、計測は十二分に行えている。
 なので戦闘自体は、そう気負わずとも目的の勝利回数を得られるだろう。

「っと、その前に職業と称号の方もしっかり切り替えておかないとな」

 人間爆弾系の[称号]のままだと、触れられただけで爆発する危険物だし。
 ……あっ、そうじゃなくとも雄叫びを上げられただけで死ぬか。

 職業は【闘士】、【騎士】、【聖騎士】、【戦士】、【竜戦士】の五つを。
 職業スキルは戦闘系に揃え、騎士系の被ダメージ量カットも採用している。

 そして[称号]は『疾く駆ける者』、『痛みをバネに(笑)』、『闘匠』。それに『素人武人』、『神業武人』を選択。
 こちらはまあ……攻撃を当てるためだ。

 セットするものも決めたので、中央の広場に向かい参加を表明する。
 観戦者かどうかは、足が森に入っているかどうかで決まっていた。

 一歩踏み出すと、新たな挑戦者ということで歓迎を受ける。
 すぐに暇な者がこちらにやってきて、模擬戦をしたいと言ってきた。

 それを受け入れ、互いに準備ができれば自動的に戦闘開始。
 合図は周囲が勝手に出してくれるので、それに合わせて動けばいい。

 ……さて、実は明確な勝利数は決まっていのだが、いつになったら終わるのやら。
 定期的に来るらしい森獣が来るまで、まずは手合わせを願うとしよう。


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