虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭中篇 その11
千の刃が並び立つ森の中、俺と森獣である虎は戦闘を繰り広げていた。
「くっ……これは手厳しい」
『やっぱり噂通りだな。弱い気配駄々洩れな癖して、いつまでも戦い続けてやがる』
「それこそが『生者』の本質であり、これまでの経験の結果ですので。彼らに恥じない戦いをしようとすれば、自ずとこうなります」
『そりゃあいい。なら、そいつらを倒したお前に勝って──俺が最強だぜ!』
たとえ俺に勝っても、大半の奴には負けるだろうから……じゃんけんみたいになるな。
いやまあ、これまでの強者にしたって初見殺しで嵌めた感じがあるけども。
森獣──『剣虎』は種族名通り、体から生やして刃を使って攻撃してくる。
正確には攻撃だけではなく、防御や移動にもその刃を用いていた。
射出、伸長、収縮、操作……体から切り離しても、一定時間は自由に操れるその刃を周囲に展開して、何度も何度も俺を切り刻んでは刃を元に戻している。
また生えてくるかはともかく、戻すということは何かしらの制限があるということ。
それも勝つための隙になるか……そう考えて、行動を始める。
「──『サウザンドエッジ』」
『おっ?』
「貴方の刃、こちらも利用させていただきましょう──“セットウェポン”」
飛んできていた刃を一振り、自分の体を使い繋ぎ留める。
暴れる刃を押さえつけながら、死神の鎌を解除して再度使った『サウザンドエッジ』。
読み込んだ武器を、能力によって複製して地面から千本生やすことができる。
それによって、剣虎の生体武器である刃を俺の生みだした。
「そして──『リビングドール』!」
『……チッ、俺様の刃を勝手に使うとはいい度胸じゃん。しかも、俺様に扱えないようにしてあるだろ』
「そうでなければ、私は千の武器を貴方様に与えた愚か者ですよ? そうではないと、この身を以って証明しただけですよ」
無機物操作の『プログレス』で、千本の刃すべてを同時に操る。
必要なのは魔力、一定本数で必要量が増加するが……999あれば充分だ。
対する剣虎の生やす刃は、視認している限りでもニ十本程度。
非常時に対して備えているため、そのニ十本もすべては使えない。
「偽りの千本と本物のニ十本、まずはこちらの刃で打ち合いましょう」
『……ようやく分かったじゃん。本当にヤバい奴なんだな、お前は』
「何のことだか分かりませんが、私は人畜無害ですからね」
このままごり押しで行けば、勝てるだろうが……それほど甘くはないよな。
そのことを心に刻み付け、更なる猛攻を仕掛けていった。
──なお、俺の発言にありえないものを見た顔をした獣人が三人いたとか居ないとか。
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