虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭中篇 その02



 南、北東、東と来て……お次は南東。
 滝から流れ出ていた水の勢いも、だいぶ収まって分岐している。

「小川のせせらぎ、とかそういう風流な感じなんだろうな。ここはそういうリラックスする場所……なのかな?」

 ちなみに俺の行っていない区画、その中には魔物が普通に出てくる場所もある。
 ただしふれあい広場的な場所と、戦闘用などで分けられているのだが。

 南東区画を巡ってみると、魔物はいっさい出現しなかった。
 そのうえで、木洩れ日などが心も体もほっこりさせるなど……うん、休養地だな。

「さて、森獣を探さないとな」

 中央区に向かうための許可証は、この区画のどこかに居る森獣から貰うことができる。
 だが、普通に探しても見つけることができなかった。

「今回はちゃんと、『SEBAS』からやり方を学んだからな──『インストール』」

 俺と『SEBAS』で生み出した、新たな能力のシステム『プログレス』。
 俺自身が使えないそのシステムだが、開発者権限で擬似的に使えるようにしてある。

 使う方法は二つ、これはその一つでもう一つの方法を前回は多用した。
 そして今回、空いた時間にやり方を学んでどうにかそちらでも使えるようになる。

 ……まあ、『SEBAS』が俺でも使えるように簡易化してくれたのもあるけど。
 多少手順は踏むことになるのだが、それはどちらでも変わらないので問題なかった。

「言ったら出てくる画面から、自分の欲しい能力を選んで……『マルチプルセンサー』にしよーっと」

 一定領域内ならば、どんな存在でも完全に感知することができるこの能力。
 探すのに便利過ぎる能力を起動させ、俺用の装置に組み込む。

 ……前回の方法だと、完全に初期状態なので大した距離を探せなかったのだ。
 しかしこちらの方法ならば、使用者の現状に合わせた性能を発揮させられる。

 すぐに起動させると、周囲の情報がこれまで以上に把握可能に。
 ただしそれは、常人が理解できなくなるほどの情報量……持ち主は成長したようだ。

「なら、これを[マップ]に組み込む形で処理させれば……うん、これもできる」

 こういうこともあると予測されており、画面操作で脳内処理は行われなくなった。
 代わりに通常の2D表示から、3D表示と化した[マップ]機能を確認する。

「さて、どこにいるのやら……ここらには居ないみたいだな」

 とはいえ、今回はもう一度歩き直せば確実にどこかで見つかる。
 念のため、空や地中まで探知領域を伸ばしているので、逃げられることはない。

 その分歩く距離が増えているのだが、これまでに比べれば容易いこと。
 でもまあ、気になりはする……いったいどこに隠れているのやら。


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