虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭中篇 その01



 二日目……ではなく数日後。
 この祭り、なんと一月も掛けて行われる大イベントなんだとか。

 時間の感覚がズレている俺たち休人からすると、非常に助かる長さだ。
 この間、国の方で援助もあるので、国民たちも仕事をサボって張り切っているらしい。

 ……それでいいのだろうか。

「まあともあれ、今日も頑張りましょうか」

 すでに獣人たちの中には、中央区へ辿り着いた者が居ると盛り上がっていた。
 数日ほどで着いた理由に、『プログレス』が挙げられていて少しだけ感動する。

 お陰様で王家公認の『プログレス』販売店もがっぽり、俺の財布もうっはうは。
 祭りでどれだけお金を使おうと、尽きぬほどには稼いでいる。

「お金を使う職業ってあったかな?」

《【賭博士】、【道楽人】から派生する職業が該当します。彼らは金銭をリソースとして用い、能力値の強化や行動の性能に変化を促すことが可能です》

「……そういうときに使った金って、いったいどこに行くんだろうな」

《金銭はリソースとして還元された後、迷宮や星脈を通じて魔物などに供給されます。魔物の強化だけでなく、ドロップする金銭を調整しているようです》

 なぜ魔物がお金を落とすのか、そういう部分にも理屈があるようだ。
 まあ要するに、お金を流通させないと魔物が強くなるぞ……ってことらしい。

 意外と重要な話っぽいが、俺自身はそこまで気にしていない。
 そういえば、『プログレス』にもお金関係の能力があった気がする。

 そういうのもまた、流通妨害をより進行させるのかもしれない。
 逆にお金を生み出す能力もあったはずなので、本当に不思議だよ。

「『プログレス』は、メカドラを基に創り出した装置なわけだけど……そんな世界のシステムに関わるレベルの能力が、どうしてこうもポンポン出現しているのかさっぱりだ」

《メカドラは神代の産物、機械という形ではありますが魔法が概念として物質化しているものでもありました》

「……魔法だから、現実を書き換えるだけでのナニカが備わっているってことか?」

《旦那様。レベル上限達成による鑑定情報の拡張は、あくまでも同一のシステムで処理が行われているからこそのものです。そのため知り得ることも、システム内で記録された事象に限定されてしまいます》

 分からないことがあっても、それは世界が知らないからこそ。
 そして、神代においてメカドラはそんな技術隠蔽がなされた機械だったわけだ。

「……お金の話から、なんだかいつの間にか壮大な話になってるな」

 まあ、そろそろ祭りに参加しよう。
 長期間やるとはいえ、やはり時間に制限があるのだからな。


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