虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭前篇 その15
──それなりに時間があったのだが、習っている内に中流へと辿り着いた。
たしかに『SEBAS』の使うインストール式よりは簡単ではあったが、結局難しいことには変わりなかった……が、それでもとりあえず時間さえ掛ければできるようになる。
そんなこんなで、水に溶けるボートを観た後に周囲を調べてみた。
「あれは……釣り、なのか?」
《釣りだけでなく、素材回収などによって一定の成績を出すことで、この区画では評価されるようです》
「まあ、一つだけ分かることがあるな──ここの森獣は熊か」
集めた素材を評価するためか、獣人たちが木で彫られた像にそれらを捧げている。
そしてその形状がまさに熊……あっ、口に鮭は咥えてなかった。
「でも、魚を捧げているヤツが多いな。それはなんでだろうか?」
《釣り竿と魚が用意されているようですね。魚は本物ではなく、先ほどの流虎のように水で再現しているもののようです。また、釣り竿には簡易的に釣りスキルが付属しているようですので、何も持たずとも参加可能です》
素材の採取をするために、本来必要な物は無い……ただただ、面倒臭いだけで。
スキルがあれば勝手にやってくれることも全部、意識してやらないといけないのだ。
普通に回収できる物ならともかく、特殊な方法が必要な素材は……一苦労する。
まあその点、釣りなら最悪力任せに引っ張るだけでいけるのがこの世界だしな。
「釣りは後でやってみるとして。とりあえず今は、その評価が高い素材を集めてみよう。『SEBAS』、一番いいアイテムは?」
《森のどこかにある蜂の蜜とのこと。あえて詳細が隠されていますね》
「……ちなみに、蜂は確認されているか?」
《現在捜索中ですが、おそらく通常の蜂とは異なります。生息地なども、森とは限らないかもしれません》
まあ、液体状の虎が居たぐらいなので、そういうこともあるのだろう。
どこにいるのか分からないが、見つけられていないからこそ見つける価値がある。
「試してみるか……“神持祈祷”」
神から祝福を授かると、誰でもそこから経由して使うことができる能力。
祈った際、その祝福に準じた恩恵にあやかれるというもの。
そして今回、俺は眷属神であるプログレスに祈りを捧げた。
何度も語った通り、その恩恵は他者の持つ『プログレス』の能力を使うというものだ。
「いろいろと不完全だし、まだ信仰値が足りないからな……『SEBAS』の方には劣るが、それでもできることをやってみようか」
これで蜂を探せるかは微妙だが、それでも便利な能力を借りられた。
さぁ、ちゃっちゃか発見して許可を貰いたいなー。
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