虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭前篇 その12
俺の生命力は1なので、スタミナという概念はさして関係ない。
死亡後には真っ新な状態になるのが死に戻りなので、疲労感などもリセットするのだ。
実際のスタミナ値は、主に肉体強度であるVITが関わっている隠しステータス。
俺が飲んだポーションは、その減りを抑えてくれるという代物だ。
ある意味死にづらくなるアイテムだが、結局他の要因で死んでしまう俺には関係ない。
だが俺の作った物なので、少しばかり特別な効果が付いている。
《精神高揚、肉体活性……それらを死亡後も引き継げる小細工。まあ、大した意味は無いけど、それでも盛り上がるよな》
もちろん、本当の泳者がやったら間違いなくドーピングで捕まるだろうけど、この世界の【泳者】には、むしろこれ以上にヤバいヤツで強化する人もいるので問題なし。
思考速度も向上するため、結界を脳波で動かして体に泳ぎを強要する。
その移動距離は職業能力で補正を受け、一搔きでぐんぐん進んでいく。
視界に映る魔核の在り処を求め、ひたすら泳ぎを続ける。
森獣の魔核はそんな俺に気づいたのか、さらに速度を上げて逃走。
《なら、スクロールで──『水衣』》
魔法ガチャでお馴染み(?)の『タブースペルズ』で出てきた魔法。
効果は水を纏うことで、耐性や性能の強化が行えるというもの。
だがその本質は適性向上および同一化。
つまり水属性という概念を、より自分と重ね合わせることにある。
魔法を発動すると、体に水で創られた羽衣のようなものが纏わりつく。
すると衣が辺りの水が生んでいた抵抗を緩和させ、進む速度を向上させてくれる。
《これ、で……届く!》
進めば進むほど体に衣が馴染み、泳ぐ速度が上がっていく。
森獣も逃げてはいたが、速すぎれば周りの獣人たちに影響が出る。
なのであまり無茶はできず、次第に俺の手が近づいていく。
そして、逃げるうちに子供たちが集まる場所へ向かってしまい──俺は手を止めた。
《…………》
もちろん、その隙に魔核はこの場から遠ざかっていく。
それでも出来なかった、間違いなく子供たちに影響が出そうだったから。
《旦那様……》
《いい。とりあえず、上に出よう》
《畏まりました》
だいぶ執着したとはいえ、無くても困るわけじゃない。
そう割り切って、俺は浮上し……そこで目にする。
『──ふむ、合格である』
この地を守護する、水の森獣に。
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