虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭前篇 その07
お祭りで皆が盛り上がる中、俺だけが悶々と悩んでいる。
自分の力を充分に扱えていない、これはある意味致命的な問題だ。
今さらそんなことを思える辺り、これまで『SEBAS』に頼りっぱなしだったと速攻で分かる……なので現在、しっかりとしたお勉強をやり直している。
「えっと、まず現地人の場合は能力の行使は基本的に音声コマンド。使い方はなんとなく使おうと思えば脳裏に浮かぶから、その通りにやっているわけだ」
《一部の者──達人やその必要に駆られた者たちは、思念による起動が可能です。ただしその場合、明確なイメージによって使うモノが認識できていなければなりません》
「けど休人の場合、[メニュー]がそれをサポートしてくれる。今は『プログレス』にも同じ機能を組み込んであるから、ある程度補助はしてくれるんだけど……本当、優遇されているよな」
なんせ[メニュー]は、本当にいろんなことをサポートしてくれるのだから。
魔技なら詠唱文を表示、武技なら発動に必要な動きを教えてくれたりもする。
完全オートもできるが、それは基本的に初心者か非戦闘職しか使わなくなる。
途中でキャンセルができないので、機械的な動きを読まれて反撃を喰らうからだ。
「[称号]の切り替えもギルドとか神殿にある神代魔道具や聖職者の能力じゃないとできなかったし、[パーティー]もギルドで結ぶか魔道具を使わないとダメ……本当に、今さらだけど不便なんだな」
…………なんだかこれを考え続けると、物凄く時間が掛かりそうだ。
とりあえず考察はここで終了して、ぶっつけ本番──体で覚える作戦を実行する。
「水の中に居る可能性が高いし、それ関係のものを……これは[メニュー]でいいか」
音声コマンドは恥ずかしいし、バレると困る情報も盛りだくさんだ。
ここに居るのは獣人、五感が冴えているので小声でも聞かれる可能性がある。
……ということにして、画面操作でやるべきことを済ませた。
「【潜水士】、【漁師】、【鑑定士】、そして【高位鑑定士】と【探偵】。水の中を調べられる職業と、鑑定で情報を開示できる職業だな。あとは[称号]を弄って……」
水の流れが分かる『激流を渡る者』、水を呑み込みづらくなる『漂流者』、暗視や水圧に耐性が付く『深海の到達者』、鑑定に補正が入る『知りたがり』と『見取り学習』を選びセットしていく。
「迷宮もたくさん攻略しているけど、それぞれ五つずつで拡張も止まったからなぁ。まあ無尽蔵に増えていたら、それこそわざわざ経験値で常時化しなくても良くなってたか」
昔は迷宮を攻略すると、今セットした職業や称号をセットできる数が増えていた。
だが、今ではそれもできない……だが他の意味でも、その方がよかったかもしれない。
──だってたくさんあっても、俺だけじゃどうにもできなかっただろうしな。
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