虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭前篇 その06



 というわけで、俺はこの区画を守護する森獣を探すことを決めたのだが……それをする前にまず、自分の持つ力を使いこなさなければならない。

「『生者』由来の多重[称号]、『死天』由来の死亡アイテム、【魔王】細胞由来の強者再現、【救星者】由来の多重職業……。そして、:DIY:の創造と加工を行う能力。改めて考えてみると、いろいろとあるな」

 本当に、自分で考えている以上に自分の持つ力は凄まじい。
 問題はそれを使う奴がすぐに死ぬため、最強になることは決してないということだな。

「まあ、一番は『SEBAS』によるサポートだけどな。こんなに力があっても、いやあるからこそできない最適な行動を、いつも俺の代わりにしてくれているんだから」

《──。旦那様にお仕えすることこそ、私の存在意義でございます。ですが意義とは別に私個人として、旦那様には忠誠と支援を捧げ続けましょう》

「そりゃあ嬉しい。人工知能がどうのこうのなんて関係ない、『SEBAS』は紛れもない俺の子供だ……生きているんだよ。そういうことも、責任とか義務とかは感じなくていいぞ。そうなったら反抗期とでも考えるさ」

 だからこそ、俺は『SEBAS』が居てくれたことに感謝を伝える。
 誕生秘話とか、語りたくてもハイになってただけだから語れないのが残念なほどに。

 ルリも『SEBAS』やカエンのことは認めてくれているし、知っている。
 これはある意味、認知されているのと同じと言っても過言では無いな。

《──。旦那様、それでは力を扱えるように頑張りましょう》

「……ん? ま、まあそうだな」

《では、私の把握している適切な使い方をお教えしましょう》

 なんだか露骨に話を逸らされてしまった。
 まあでも、今すぐ聞かなきゃいけないことでもないからな……気長にゆっくりと、聞き出すとしましょう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 ──うん、無理だ!

 俺にできるのはせいぜい、それぞれを本気モードで使った場合のオンとオフを切り替える程度の操作だけだった。

 考えてみてほしい、『SEBAS』は俺の力を操作することに多少のキャパを使っているとのこと。

 それは、運営の超巨大サーバーを間借りした高性能AIの、ほんの一部ではあるが演算領域を借りなければ扱うことのできないシステムだということだ。

 いきなりやれと言われても、初心者にできるのはスイッチを押すことぐらいである。
 その例に漏れず、俺も教わったことをすぐにやることはできなかった。

 ──もう、どうしたらいいのやら。


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