虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭前篇 その05
そもそも、なぜ俺が入り口である南の森で森獣と会おうとしないのか……それは単純に会わせる顔が無いからである。
前に来た際、俺は緑色の鹿に追いかけ回された……それこそが南の守護獣だったのだ。
まあ、そのときは『侵略者』に蝕まれていたので、本人の意思は無いんだろうけど。
本来の守護領域を超えて追いかけ回され、実験に付き合わせたり戦闘不能状態にしたりと……まあ、いろいろとやったからな。
そんな相手にまた会うと言うのも、なかなか難しいモノだ。
そしてそれを避けられるのならば、避けるのもまた立派なコミュニケーションである。
「というわけで、一気に北東まで移動だ。滝も流れているし、やっぱりマイナスイオン効果を味わえるのがいいなぁ」
こちらの世界だと、マイナスイオンは水精霊がやっていることという認識で、本当に滝で癒し効果を得られることになっていた。
……まあつまり、れっきとした生き物でもあるため、癒しと共に俺だけは死も与えられているんだけどな。
「さて、『SEBAS』。ここでやっていることは……アレでいいのか?」
《はい。旦那様の視界に映るものが、この区画における企画のようなものです》
「……プールだな、うん」
滝が流れていると俺は語ったが、前回来た時と違って滝がおかしくなっている。
それは滝の末端が水底に触れることなく、そのまま螺旋を描いて上に向かっていた。
そのまま水の流れは滝の上へ向かっているので、おそらく循環しているのだろう。
そんな道を現在、水着姿の獣人たちが楽しそうに滑っている。
「ここで何をすればいいんだ?」
《滝から形成されるプールのどこかに、どうやら森獣が潜んでいるようです。それを見つけた者には証が与えられるとのこと。ただし加護を与えるかどうかは、森獣が判断するようですね》
「何を以ってその判断をするのか、まあ分からないけど……最悪交渉すればいいし、それでもダメならそこに『(物理)』って付ければなんとかなるか」
脅迫とかそういうことではなく、勝負をするという意味だ。
獣人たちと関係を結ぶ守護獣たちなので、この方法は割と上手くいくと思う
「今回の目標は、まず俺だけで自分の力を使えるようにしてみるってことかな。というわけで、少し使い方のコツとかがあったら教えてくれないか?」
《旦那様がお望みとあらば、畏まりました》
もちろん、すぐに完全になるとは思わないが……俺にはトライ&エラーの権化みたいな権能もあるし、まあなんとかなるだろうな。
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