虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭前篇 その04



 隠れながら、祭りを楽しむ。
 イベントの時も似たような感じだったな、なんてことを思いながら。

 手にはいくつか、獣人たちが出店で売っていた食べ物を持って。
 ……知ってるか? 人間って、食べ過ぎても死ぬんだぜ?

「お土産はこれでよし。さて、これから何をするかだな」

《どうやら聖獣祭では、森獣や聖獣との模擬戦が行えるようですね。勝敗に関わらず、気に入られれば加護が貰えるとのことで、多くの獣人が赴いているようです》

「聖獣の加護ねぇ……いやまあ、貰ってないヤツもいるからな」

 俺はその上位互換、星獣の加護群を所有している。
 まあ、字のごとく星が生みだした獣たちから、無数の加護を受けた証だ。

 もちろん、貰ったのは風兎やイピリアからである。
 他にも隠れ里に潜む聖獣からも、加護をもらい受けているぞ。

「星獣たちの加護は重複できるし、スキルに似た効果をくれる奴もいるしな。よし、せっかくの祭りだし行ってみようか」

《畏まりました。では、最適ルートをご案内いたします》

「そうだな……今回は頼むよ」

 大森林は現在、聖獣や森獣たちに会いたい獣人たちで混雑していた。
 その中をただ愚直に進もうとすれば……俺はいったい、何度死ぬのやら。

 それを解決するためには、ドローンを飛ばしてくれていた『SEBAS』の指示を受けるのが一番手っ取り早い。

 まあ、祭りで使われている道以外を使えば気にならないんだろうけど。
 ただし、そちらは祭りの最中は通れないようにしているのだ。

 強行突破をすれば、兵士たちに捕まる危険性がある。
 それは避けたいので、祭り用に舗道された場所だけを通るのだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 森獣たちは、それぞれ与えられた領域を守護している。
 獣人たちはスタンプラリーのように、それぞれの領域を訪れて森獣に会っていた。

「順番は特に決まっていないのか……その代わり、聖獣に会うなら一定数の了承が必要になるみたいだけど」

 大森林は九区画に分けられており、中心を囲うように森獣の領域が存在する。
 それらを巡っていき、認められるだけの認証を受ければ晴れて中央に行けるのだ。

「俺が最初に居たのが南の入り口、ここから時計回りか反時計回りで行くんだよな」

 前回は『侵略者』で揉めに揉め、いろいろと強引な移動をしていた。
 しかし今回は自由、どのように行っても問題は無い。

「さらに言うと、転位もできるみたいだし。聖獣様は何がお望みなんだか」

 前に来たときは会わなかったらな……とりあえず、自分にできる範囲でいろいろと試してみるとしますか。


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